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第20話
それから一週間、僕は柊木くんに避けられている。
いや、授業中とか、すっごく視線は感じるんだけど、僕が顔を向けると逸らす。
声をかけようとすると、スルリと避けられる。
すっごくムカムカするんだけど。
避けられるのは良いとして、避けるんだったら、何か言いたげな表情で視線を送るのをやめて欲しい。
気になる。
なのに、真相を明かそうとすると避けるんだから、余計に腹が立つ。
それと…、柊木くんに見られていると、なんか、その…、
色んな所が色んな意味でムズムズし始めるから、やめて欲しい。
と、なかなかフラストレーションの溜まる毎日を過ごしていたんだけど、元々、気の短い僕は一週間で限界を迎えた。
月曜日、そそくさと帰ろうとする柊木くんの手を掴んだ。
面白いくらい、肩がビクリと上がった。
「な、何か用?」
「…、用があるのはそっちじゃないの?」
「お、俺は…、べつに梁瀬くんに用はないよ」
「は?」
「…は?」
「梁瀬って何?僕、奏でしょ?」
「奏が…、俺のこと柊木くんって呼ぶから…」
「それはっ…、それはその…」
「何?言ってくれなきゃ、俺、帰るからね」
「な、なんだそれ、ずるいだろ!?」
「あっそ。帰る」
な、なんで形勢逆転してんだよ…
僕が、苗字で呼ぶ理由なんて…
「あっ、秋臣って呼ぶと…、え、え…、っちしたときのこと…、思い出しちゃうから…、その、恥ずかしくて…、って、あーもう!何言わせるんだよ!!」
「…」
「お、おいっ、なんか言えよ!!」
突然無言になった柊木くんを見上げる。
と、柊木くんは顔を手で覆っていた。
耳が赤い気がする。
「ああああ、可愛い、抱き潰したい」
「…は?」
「今日、一緒に帰ろうか?」
「…、はあ、しょうがねぇな…」
本当は、先々週のような思いをするのは嫌だけれど、久々に嬉しそうな柊木くんを見ていたら、僕が折れるべきなのかもと思った。
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