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第21話
柊木秋臣 視点
薄暗くなった部屋で、隣ですやすや眠る奏の髪を撫でる。
俺の固めの黒い髪とは違い、茶色くて細くてさらさらだから、とても心地いい。
どこからどこまでも、奏は俺の理想を詰め込んだ可愛い生き物。
月曜日から、1週間我慢していた分の欲をぶつけてしまい、奏が気を失うまで抱き潰した。
起きたら怒られそうだな。
すぐに機嫌が直ってくれたらいいんだけど。
そろそろ6時半か。
7時には起こしてあげないと、また奏のお母さんに怒られてしまう。
奏が毎日、俺の部屋に居て、帰ったらすぐに会えればいいのに。
「ん…、あき…お、み?」
「あ、ごめん、起こした?」
奏に名前を呼ばれて、焦るが、またむにゃむにゃと眠り始めた。
寝言で名前を呼ぶって…、可愛いかよ…
今すぐに叩き起こして、もう1ラウンドいきたいところだけど、このやすらかな寝顔を眺めてもいたい。
どうにもできない気持ちを、枕に顔を押し当てて叫ぶ。
どのぐらいそうしていただろうか。
肩を揺すられて、枕から顔を上げると、心配そうな顔をした奏がいた。
「…、秋臣、大丈夫?」
「あ、ああ、ごめん。今度こそ、起こしちゃったね」
「なんかブツブツ聞こえると思ったら、秋臣が枕にめり込む勢いで顔突っ込んでるから何か発作でも起きたのかと思った」
「…、ある種の発作だね」
「えっ!?大丈夫?」
「全然、大丈夫。命には関わらないやつだから」
「そ、そう?ならいいんだけど」
「名残惜しいけど、もう7時なるし、送ってくよ?」
「え?」
「ほら、外も暗いし」
「そ…、だよね」
「奏?」
「う、ううん、なんでもない」
うちに来たときとは打って変わって、しょんぼりしているような奏の姿に首をかしげる。
ひょっとして…
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