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第23話
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▼梁瀬 奏 視点に戻ります
それは一瞬の出来事だった。
月曜日から激しい夜を過ごしてしまい、僕は机に張り付くようにして、火曜日の午前中をやり過ごしていた。
そこに蒲田がやってきて、なんやかんやで、誰が僕を担いで1番速く走れるか、という選手権が開催された。
そこまでは、まあ、学生ノリで楽しかったし、僕も、もしも体が辛いときに移動教室とかあったら、ワンチャン担いでもらおうとも思った。
しかし、世の中には僕のような非力くんもいるわけで…、
その子の番になったときに、案の定、僕を担いだまま彼が転んだ。
覆いかぶさるように倒れてきたその子と僕は…、思いっきり、頭突きのような…、チューを……
彼は慌てて起き上がって、謝ってくれたけど、見ていたギャラリーが黙っててくれるわけもなく、「梁瀬の初キスが奪われた」と騒ぎ立てられた。
いや、初めてじゃねーし…
違った。そうじゃない。
その時の人ごみ間から見えた柊木くんの顔に、僕は人生の終わりを悟った。
昨日、あんな怖いことを言われたのに、翌日にやらかしてしまうなんて、神様に試されているとしか思えない。
「やーなーせーっ」
「なんだよ、蒲田…、元はといえばお前のせ…」
「俺とも、チューしよう」
「はあ!?」
「だって、柔らかかったって言ってたし、それに俺、梁瀬だったらいける」
「いける じゃねぇわ!僕は嫌だね、蒲田なんてお断り」
「嫌よ嫌よもキスのうちってね」
「変態親父みたいなこと言ってんじゃねぇって!マジでやめてっ」
グイグイと顔を近づけてくる蒲田を涙目になりながら押し返す。
周りのやつらも冷やかしてくるだけで、誰も止めてくれない。
「蒲田、やめろって」
柊木くんが、蒲田のワイシャツの襟を掴んで引き離してくれた。
た、助かった…
「グエェ、わ、分かったから、手を離せ」
「…、奏にこういうことしないで」
「ゲホ…、奏?ああ!梁瀬ってそんな可愛い名前なんだっけ?」
「…、可愛いとか言うな。コンプレックスなんだよ」
僕だって、もっと男らしい名前が良かったし。
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