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第36話

「どどどどどうしたの!?」 焦りすぎてうまく口が回らない。 「いや、お前がどうした」 蒲田は不思議そうな顔をして僕を見る。 「おっ、男同士とはいえ、更衣室開けるならノックしろよなっ」 「ああ、ごめん。ちょっと遅かったから心配になってあけちまった。っていうか、柊木は似合う気がしてたけど…、梁瀬も結構似合ってるな」 「はぁ!?全然嬉しくないんだけど…」 「さっすが柊木だな。人選よかったわ」 「うるさい。蒲田は見るな」 「え?」 「あー、ごめん柊木くん、照れ屋さんだから」 「柊木が?そ、そっか、あんまり見ないようにするわ」 蒲田が鈍感でよかった。 最近の柊木くん、オープンすぎて、本当に怖いよ。 クラスの子に、柊木くんと僕の関係がばれたら、間違いなく僕の残りの高校生活は地獄だ。 まあ、女装してクラスの人に見せることも、かなりしんどいけど。 「じゃあ、とりあえず見せに行こうぜ?かなりクオリティ高いし、クラスの士気も上がりそう」 「そ、そうだね。これ作った子、本当器用だね」 「デザインは申し分ないけど、奏の分はスカート長めにしておいてくれない?」 「あー、柄パンだと見えちゃうよな~」 いや、柊木くんの言っている意味はそっちじゃない気がする… 「って、僕、本番もこっち着るの?」 「…むしろ、執事っていう選択肢がなかったわ」 「俺も」 「なっ、なんだと!?」 「とりあえず、クラスの人に見てもらおうぜ。そんで、似合ってるって言われたらこっちでいこう」 「…、絶対似合ってないから」 意を決して教室の扉を開ける。 いたるところから柊木くんの衣装への賛称の声が上がる。 そりゃあ、柊木くんと並んだら、僕なんか何を着ても霞んで見えるに決まっているけど。 「柊木くん、めちゃくちゃ似合ってる~!」 「作った子、わかってるね~」 「こりゃ、売上伸びますわ~」 「そうだね、本当によく出来てると思うよ」 「そのスマイルいい!まさに執事って感じ」 「すごくいい!尊い!」 「そんなに褒めなくても…」 そんな風に言いつつも、柊木くんはデレデレしてる(ように僕には見える)。 なんか、面白くないんだけど。 ふーん。 どうせ、僕なんてチビで地味ですよー。

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