37 / 74

第37話

人だかりが出来ている柊木くんを睨んでいると、蒲田に小突かれる。 「あれ?もしかして梁瀬、拗ねてる?」 「…、別に拗ねてない」 「柊木ばかりちやほやされてるけど、大丈夫、可愛いよ」 「そこじゃない」 「え?じゃあ、なんで拗ねてるの?」 「…、拗ねてないし…」 「やぁ~だ~、かーわーいーいー」 「き、きっしょ!?くっつくなって!」 急にオカマっぽくなった蒲田が抱き着いて頬ずりしてくる。 絶妙にキモイ。 「こらー、蒲田、梁瀬くんとイチャつくなー」 そのツッコミで柊木くんに向いていた目がこちらに向けられる。 「っていうか、梁瀬くん、よく見たら可愛くね?」 「似合ってるし」 「女装コンテスト、出てみたら?」 「…、へ?」 いやいや、待って。 僕、そういうのを望んでいたわけじゃないから… 「な?俺の梁瀬、可愛いだろ?」 「だ、誰がお前のっ…」 「奏」 「ひっ…」 な、なんで柊木くん、めちゃくちゃ怒ってるの…!? 「奏、こっちにおいで?」 「えっ、何で?」 「言ってる意味、わかるでしょ?」 「…、はい」 いや、全然わかんないよ。 ガヤガヤしてたクラスメイトたちも、柊木くんの冷たい声のせいか静まり返っている。 なにこの展開…、柊木くんってもしかして、情緒不安定なの? 「あと、蒲田」 「えっ、なになに?」 「奏に触ったら殺す」 「ええ!?なんで!?」 「殺す」 「わ、分かったって」 おずおずと柊木くんに近づく。 柊木くんの目の前に立ち、恐る恐る見上げる。 柊木くんの冷たい目と合った瞬間、足が地から離れた。 「えっ!?な、なに!?」 「暴れると落ちるよ」 クラスの人が、とたんにキャーキャー騒ぎ出す。 その黄色い声の中、僕は柊木くんにお姫様抱っこをされたまま、教室を出た。

ともだちにシェアしよう!