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第38話
「ひ、柊木くん、怒ってる?」
「柊木くん?」
「あ…、えっと、秋臣くん」
「怒ってないように見える?」
「見えないです」
そこからまた沈黙になる。
正直、クラスの皆の前でお姫様抱っことか、僕のほうが怒りたいくらいなのに…、怒った柊木くん、怖すぎて無理。
「あの、僕、重くない?歩けるよ?」
「ちょっと、黙っててくれない?」
「あ、ごめん…」
いつもは話しかけると、ちゃんと応えてくれるのに…、なんかすっごく冷たい。
僕、何かしたっけ?
秋臣の顔を見上げても、冷たい表情で前を見たままだ。
ジワジワと視界がぼやけ始める。
絶対、この距離で見上げたら、僕の視線に気づくはずなのに、明らかに無視されてる。
ボロッと目の淵から涙がこぼれた。
こんなことで泣くなんて…
なんだか情けなくなってきて、さらに涙が溢れてくる。
「うっ…、うぅ…」
「…、奏?泣いてるの?」
「泣いてないっ」
「嘘つき」
「だってっ、秋臣が…、秋臣がっ、つ゛め゛た゛い゛ぃ…」
「分かったから、泣かないで」
以前と同じ空き教室に入り、何故かこないだよりもグレードアップしたマットの上に降ろされる。
秋臣は僕が落ち着くまで、背中をトントンしてくれた。
「落ちついた?」
落ち着いたけど、泣いた顔を見られたくないから、秋臣の胸に顔を埋めたまま頷いた。
「奏、顔見せて」
「やだ」
「可愛い」
「うるせぇ…」
悪態をつきつつも、いつも通りの秋臣に戻ってホッとする。
なんとなく、離れがたくて、いつもよりも強めにしがみつく。
「今日の奏は一段と可愛いね。服のせいかな?」
「服…、あっ!着替えないと」
慌てて顔を上げた。
っていうか、僕の鼻水とかで汚れてないかな?
「ふふ、やっと顔上げた」
「うわっ、見るなよ」
「どうせなら、勿体無いから、このまま愉しもうか」
「愉しむって…、まさか」
そのまま秋臣に押し倒された。
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