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第43話

もう、文化祭前日か… 前日は午後の半日が全て文化祭準備に当てられる。 正直、あまりクラスに馴染みきっていない僕は、机を運ぶフリをして、人気の少ない廊下から中庭を眺めていた。 中庭はスペースも広いし、1階の1番目立つところにあるから競争率が激しい。 今年も例のごとく、3年生のクラスが勝ち取っている。 僕はあまり忙しいのは好きじゃないから来年も屋内希望だ。 でも、もしも、来年も蒲田が実行委員だったら、無理にでも勝ち取ってきそうだな… 今日は天気がいい 明日も明後日も天気が良いらしい。 そういえば、あの衣装合わせのとき依頼、秋臣と2人きりになれていないな… 秋臣と蒲田が所属している部活で、クラスの出し物とは別に、何かステージでするらしい。 その練習とか何とかで、部活の後や土日にフリーの時間がないと言われた。 もちろん、一緒にお昼を食べたり、休み時間に他愛ない話をする時間はあったけど、かなり疲れている様子だったから、僕のために時間を使ってもらうのが申し訳なくて、距離をとっていた。 蒲田に関しては、そこに実行委員の仕事もあったから、授業中は屍のようだったけど。 あれほど「奏、奏」ってうるさかったのに、それがパッタリとなくなると、なんだか寂しい。 秋臣はそんな様子、全くなかったけどね。 そりゃあ、僕のことなんか眼中にないくらい忙しいんだろうけどさ、ちょっと気に食わない。 文化祭が終わったら… 文化祭が終わったら、また2人で遊びに行ったり、家に行ったり、できるんだろうか… このまま自然消滅もアリなのか…!? いや、消滅も何も、付き合っていないじゃないか 僕が断ったようなものだけど… 「はぁ…」 窓の桟に肘をおき、中庭で楽しそうに準備をしている上級生を眺める。 このまま下校時刻までサボろうかな… 僕なんかいなくたって、誰も気づかないと思うし。 なんて、物憂げに頬杖をついていると、騒々しい声が聞こえた。 「あー!!いたいた!探したぞ、梁瀬」 「うるさいよ、蒲田」 「サボってんじゃねぇぞ」 「…」 「サボってたこと、チクられたくなかったら、男女装コンテストに出ろ」 「…、は?」 「いや…、明日出る予定だった子がインフルエンザで来れないって」 「この時期に?」 「B型だそうだ」 「いや、知らないけど」 「で、どう?」 「どう?じゃないよ。絶対出ない」 「頼む~~~、準備、サボってても怒らないから」 「…、嫌」 「じゃあ、柊木を1日好きにできる券」 「ほ、欲しい…、って、お前にそんな権限ないだろ」 「そうなんだよね~」 「つか、なんで僕なんだよ。ほかにいるでしょ」 「うーん…、俺の好み的に梁瀬なんだよな」 「うっわ、きっしょ」 「うるせぇ。実行委員なんだから、自分の出したい人に声かけたいじゃん」 「僕の性格上、絶対ムリだと思う」 「その性格を差し引いても、俺は梁瀬を推すね」 「…、ンギィ」 「マジで、頼む、梁瀬っ」 あまりに必死な蒲田の姿に、心が揺らぐ。 「あー、もうっ、しょうがないな。衣装とかは蒲田が用意してよ?」 「いいのか!?もちろん、服と化粧は任せてくれ」 「…、あと、秋臣を1日好きにできる券もよこせよ?」 「…、それは善処する。じゃあ、さっそく打ち合わせあるから一緒に体育館来てくれ」 「うん」 貸し100くらいだから、卒業までちゃんと返してくれ。

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