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第48話
っていうか、やっぱり芦田くんに睨まれてる…
「か、可愛いね?」
「…」
また無視された…
僕が先輩っぽくない、ということも関係していそうだけど、芦田くんの肝の据わりっぷりは感心しちゃう。
「え、君、昨日の…?」
「あ、ど、どうもです」
「化粧で化けるタイプなんだね~。お互いがんばろうね」
「あ、は、はい」
うわぁ、女子なのに圧倒されるくらいかっこいい…
僕もこのくらい男前だったら良かったんだけど…
『それではっ、皆様お待ちかね"男女装コンテスト"にうつりまーす!』
司会の、やけにテンションの高いコールで、どうやら始まったらしい。
うう…、緊張する。
『まずは、エントリーNo.1 我が校に舞い降りた超新星!1-A 芦田マナト君』
うわ…、芦田くんがトップバッターか…
芦田くんが会場に入ると、さまざまな声援や黄色い声が聞こえる。
人気なんだな…
っていうか、今、ファンになった人もいそう。
続々と名前が呼ばれ、自分の番が刻一刻と迫る。
『続きまして、エントリーNo.7 司会の私が見つけた原石!2-C 梁瀬奏君』
あわわわ、よ、呼ばれた…
意を決して会場に入ると、思いのほか大歓声に包まれた。
よ、良かった、こんな僕でも会場は沸かせられている。
全校生が真ん中を空けて座っている。
出場者はその真ん中の道を歩かなくてはいけない。
目が合うのが怖くて中々顔を上げられなかった。
ようやくステージにつき、ステージから生徒を見渡す。
全員が、次々に入場する出演者に目を奪われている中、一人だけ、こちらを凝視している。
秋臣だ…
この距離でも分かるぐらい、驚いた顔をしている。
可愛いと思ってもらえたかは別として、とりあえず一泡吹かせてやれた。
ちょっとだけ、気分が高揚する。
『以上、10名の皆様で優勝・準優勝を狙って頂きます』
『さっそく、アピールタイムに入りましょう。1番の芦田くんから、どうぞ』
ア…、アピールタイム!?
聞いてないぞ、蒲田ぁぁぁぁ
芦田くんは、アイドルの新曲のダンスしてる…
って、本気で可愛いんだけど…、推せる!!
み、見惚れてる場合じゃない。
僕も何か、アピールしなきゃ…
僕、特技とかないんだけど…
いや、思い出せ
何か…、何か…
『続いて、1番の梁瀬くん、どうぞっ』
「は、はい…」
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