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第49話
「けん玉、やります」
『…、けん玉?』
「えっと…、けん玉、誰か持ってません?」
『じゃあ、けん玉探している間にインタビューするね。なんでけん玉?』
「あ、えっと…、僕、おじいちゃん子だったので、おじいちゃんと一緒にけん玉してたんです…」
『へえ…、いまどきの高校生らしからぬ特技ですね』
「あ、はい…、ちなみに参段です」
『おお、結構ガチ勢でした。おっと、けん玉、校内にあったようです。それでは、お願いします』
参段と言いつつ、取得したのは1年以上前だから、かなり緊張する。
しかも、絶対鈍ってる…
なんか派手で簡単なものにしよう。
2~3個技を披露すると、見てる人も戸惑いつつも歓声を上げてくれた。
なんとか乗り切れたけど…、他の参加者と比べて、コンテスト向きじゃない…
結果としては、芦田くんが優勝で、僕に良くしてくれたイケメン女子が準優勝だった。
僕なんか、足元にも及ばないと言うことなんだろう…
凹むなぁ…
控え室で机に突っ伏していると、蒲田が入ってきた。
「よっ、お疲れ~」
「あ、開祭式、終わったの?」
「終わった終わった、大成功だった…、って梁瀬は分かりやすく凹んでるな」
「凹むよ~、ぜんぜん歯が立たなかった」
「まあ、あれは…、アピールがマニアックだったかもな」
「なんでだよっ!奥が深いんだぞ」
「そうか…。でも、2位とは3票差だったよ」
「1位とは?」
「100…」
「断トツじゃん」
「まあ、芦田くんは1ヶ月以上前から準備してたから」
「そっか…、はげましてくれてありがとな」
「…、今のキュンと来た!もう1回」
「絶対いわない」
なんてくだらない話をしていると、扉がノックされた。
「奏、いる?」
ど、どうしよう、秋臣だ…
超気まずい…
「おー、柊木。いるぞ」
「えっ、あっ…」
ちょっとぉ…、蒲田、少しは察しろよぉ…
僕の思いも虚しく、扉が開けられる。
そこには無表情な秋臣が仁王立ちしていた。
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