50 / 74
第50話
「お、おっす~、柊木!今日の奏、どう?可愛くない?」
秋臣から顔をそらした僕の顎をつかみ、蒲田がわざわざ僕の顔を上げさせた。
「か、蒲田…、やめ…」
「奏に触るな」
「えっ、ご、ごめん?」
蒲田が手を放した隙に、僕はうつむいた。
なんか…、秋臣、すっごく怒ってるし…
いや、理由はなんとなく分かるけど、そんなに怒る?
「行くよ、奏」
「…やだ」
でも、僕だって怒ってる。
っていうか、芦田くんのところに行けばいいじゃん。
「奏」
「…、なんで…、なんで僕が怒られなきゃいけないの?」
「…」
「秋臣が僕のこと放っておくからじゃん」
「分かったから、行くよ」
「…」
何が"分かった"んだろ…
秋臣のそういう、僕の気持ちを無視するところ、嫌い…
秋臣に腕を掴まれ、引かれたが、僕は頑なに動こうとはしなかった。
「…はぁ、担がれたいの?」
「…嫌」
「な、なぁ、柊木?梁瀬、嫌がってるぞ?」
「蒲田には関係ない」
「えぇ…、酷い言い様だなぁ」
「しょうがないな、よいしょっ」
「えっ!?わっ、嫌だってば!」
僕の抵抗も虚しく、担ぎ上げられた。
ベシベシと秋臣の背中を叩いて攻撃するも、おろしてくれる気配はない。
「おーろーせー!!」
「はいはい」
「秋臣なんか嫌いだ、バーカ!バーーーカ!」
「…」
「クスクス…」
「ちょっとアレ、面白くない?」
「さっきの女装の子だよね」
「担がれてるし、ウケる」
周りの人の声が聞こえ、自分がかなり悪い意味で目立っていることに気づいた。
は、恥ずかしい…
秋臣もぜんぜん喋らなくなっちゃったし。
僕は、無駄な抵抗をやめて、悔しいけど大人しく連行されることにした。
連れてこられたさきは、やっぱり空き教室だった。
っていうか、芦田くんとか僕以外の子も、ここに連れてきてるんだろうか?
恥ずかしさで収まった怒りが再加熱される。
マットにいつもより乱暴に下ろされた。
「いってぇ…、おい、あき…っ」
抗議しようとすると、秋臣に押し倒された。
近距離でイケメンに睨み付けられて、圧倒される。
「なに?このカッコ…、そんなに皆に可愛いって言われたかったわけ?」
「な、はぁ?」
「それとも、蒲田?」
「な、何言ってんの?」
「俺じゃ物足りないってことでしょ?ビッチ」
「ビ…、ビッチって…、ふざけんなよ、てめぇの方こそ、とんだヤリチンじゃねぇか!どうせ、芦田くんにも手出してるんでしょ!?」
「あしだ…?」
「よかったね、芦田くん、優勝して。無事、美男美女カップルじゃん?」
「芦田って誰?」
「…は?」
ともだちにシェアしよう!