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第50話

「お、おっす~、柊木!今日の奏、どう?可愛くない?」 秋臣から顔をそらした僕の顎をつかみ、蒲田がわざわざ僕の顔を上げさせた。 「か、蒲田…、やめ…」 「奏に触るな」 「えっ、ご、ごめん?」 蒲田が手を放した隙に、僕はうつむいた。 なんか…、秋臣、すっごく怒ってるし… いや、理由はなんとなく分かるけど、そんなに怒る? 「行くよ、奏」 「…やだ」 でも、僕だって怒ってる。 っていうか、芦田くんのところに行けばいいじゃん。 「奏」 「…、なんで…、なんで僕が怒られなきゃいけないの?」 「…」 「秋臣が僕のこと放っておくからじゃん」 「分かったから、行くよ」 「…」 何が"分かった"んだろ… 秋臣のそういう、僕の気持ちを無視するところ、嫌い… 秋臣に腕を掴まれ、引かれたが、僕は頑なに動こうとはしなかった。 「…はぁ、担がれたいの?」 「…嫌」 「な、なぁ、柊木?梁瀬、嫌がってるぞ?」 「蒲田には関係ない」 「えぇ…、酷い言い様だなぁ」 「しょうがないな、よいしょっ」 「えっ!?わっ、嫌だってば!」 僕の抵抗も虚しく、担ぎ上げられた。 ベシベシと秋臣の背中を叩いて攻撃するも、おろしてくれる気配はない。 「おーろーせー!!」 「はいはい」 「秋臣なんか嫌いだ、バーカ!バーーーカ!」 「…」 「クスクス…」 「ちょっとアレ、面白くない?」 「さっきの女装の子だよね」 「担がれてるし、ウケる」 周りの人の声が聞こえ、自分がかなり悪い意味で目立っていることに気づいた。 は、恥ずかしい… 秋臣もぜんぜん喋らなくなっちゃったし。 僕は、無駄な抵抗をやめて、悔しいけど大人しく連行されることにした。 連れてこられたさきは、やっぱり空き教室だった。 っていうか、芦田くんとか僕以外の子も、ここに連れてきてるんだろうか? 恥ずかしさで収まった怒りが再加熱される。 マットにいつもより乱暴に下ろされた。 「いってぇ…、おい、あき…っ」 抗議しようとすると、秋臣に押し倒された。 近距離でイケメンに睨み付けられて、圧倒される。 「なに?このカッコ…、そんなに皆に可愛いって言われたかったわけ?」 「な、はぁ?」 「それとも、蒲田?」 「な、何言ってんの?」 「俺じゃ物足りないってことでしょ?ビッチ」 「ビ…、ビッチって…、ふざけんなよ、てめぇの方こそ、とんだヤリチンじゃねぇか!どうせ、芦田くんにも手出してるんでしょ!?」 「あしだ…?」 「よかったね、芦田くん、優勝して。無事、美男美女カップルじゃん?」 「芦田って誰?」 「…は?」

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