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第57話

▼梁瀬 奏 の視点 はぁ~、僕ってつくづくダメだな… あんなに芦田くんに勝つ!みたいなこと言ってたくせに、まともに接客もできないんだもんな… 情けない… 「梁瀬くん…、絶望的に盛り付けのセンスないね」 「えっ…」 僕としては、かなりキュートに盛り付けたつもりのミニパフェ。 委員長にダメだしされてしまった… 「ま、まあ、練習会出てないからしょうがないよね。えっと、職員室の冷蔵庫から生クリーム取ってきてもらえる?」 「…、うん。ごめん、委員長」 「気にしないで!行く途中、絡まれないように気をつけて」 「うん」 ガックリ項垂れながら、手に張り付くゴム手袋をゴミ箱にねじ込んで、調理室を後にする。 結局、調理もダメ。 ダメダメすぎる… 「ねえ、君、女装コンテストの子でしょ?」 「え?」 声をかけられて、顔を上げると他校生らしき男子が3人立ちはだかっていた。 「あの時の衣装もよかったけど、そっちも似合ってるね」 「っていうか、コンテスト後も女装してるんだ」 「えっと、すみません、僕、仕事中で…」 「やっぱ、俺の中では断トツで可愛い」 「近くで見ると…、確かに1位の子並みに可愛いかも…」 そう言ってジロジロと顔を見られる。 ただでさえ、コミュ障なのに…、距離が近くて無理… 「うっ、あっ、あのっ…、僕、生クリーム…」 「うん?」 「生クリームちゃんって名前?」 「メルヘン設定?」 「ちがくて…、僕、お使い中なので、すみません、通してください」 「ええ~?生クリームちゃんのサービス次第ではお店に貢献しちゃうよ?」 「一番高いやつ頼んじゃうかも~」 「えっ!?ほんと!?」 僕の頑張り次第で売上が上がるかもしれない… これは、名誉挽回のチャンスだ。 「ほんとほんと~」 「ちょこ~っと付き合ってくれるだけで良いからさ」 「…、わかっ」 「奏、サボって何してるの?」 「わっ!?秋臣!」 『分かった』って言おうとした途端、背後から秋臣が現れた。 って… 「サボってないし!」 まったく、失礼しちゃうよね。 せっかく、売上に貢献しようとしたのに… 「お客様~、個別サービスはしていないので、直接お店に来てもらっていいですか?」 「ちっ、邪魔が入った。行こうぜ」 「奏ちゃ~ん、ばいばーい」 3人のうち1人が手を振ってくれたから、とりあえず振り返す。 と、後ろからど突かれた。 「いってぇーな、何してくれてんのマジで!!」 「何してくれてんの、はこっちのセリフ。個別にサービスって、うちはキャバクラじゃねぇんだぞ!?」 「キャ、キャバクラ!?」 「そう思われてもおかしくない」 「その辺は分からないけど…、僕でも売上に貢献できると思ったんだけどな…」 「そういう売上は要らない」 「だって…、僕、何もできないんだもん…」 「はぁ…」 秋臣も呆れちゃうほどのだめっぷり… やっぱ、文化祭、休んじゃえば良かったな…

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