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第59話
文化祭1日目が無事終わり、一般のお客さんが帰された。
クラスの片付けも終わり、僕は机に突っ伏していた。
「つ…、疲れた…」
「梁瀬、お疲れ~」
「あ、蒲田…、なんか今日イケメンでムカつく」
「えー、ひどくね!?いつもイケメンの間違い」
「死んどけ。っていうか、いつまで衣装着てるんだよ」
「いやぁ、この格好が評判よくて…」
「あっそ」
僕だって、評判は良かったけど、あまり好ましくない受けの良さだったから、速攻で着替えた。
いいよな、男物が似合うやつは。
「梁瀬ちゃ~ん、この後、一緒にどっか行こう~。今日の反省会と明日の決起大会」
「…、やだ」
「なんで!?」
なんでって…、そりゃ僕が個人的に秋臣と帰りたいからだけど…
「蒲田めんどくさい」
「ひっど…」
「大体、なんで僕なの。蒲田、仲いい子いっぱいいるじゃん」
「えー、でも、今日は梁瀬ちゃんの気分」
「僕は蒲田の気分じゃない」
「冷たい…」
廊下がガヤガヤと騒がしくなり、僕は教室から廊下に目を向けた。
「あ、秋臣だ」
「え?あ、ほんとだ。てか、なんであんなにギャラリーがいるわけ?」
廊下には、学年問わず生徒がキャーキャーと黄色い声を送っている。
その真ん中を秋臣が歩いていた。
隣には、女装したままの芦田くんが腕を組んで歩いていた。
「何やってんだ、あれ」
「知らない。気が変わった。蒲田、今日どっか行こう」
「え!?いいの!?」
「うん。どこ行く?」
「あ、待って。柊木誘ってない」
「誘わなくていい。どうせ秋臣はあの子とどっか行くでしょ」
「え、でもさ、誘うだけ誘って…」
「いいってば!」
自分でも驚くくらい大きい声が出てしまった。
なんでこんなにムキになってるんだろう。
「梁瀬がいいならそれで良いけど…」
「…、大きい声出してごめん。秋臣以外なら誘って良いよ」
「あー…、いや、特に思いつかないや」
「じゃあ2人で行こう」
「おう」
鞄を持って立ち上がると、ドアの入り口に秋臣が立っていた。
横にはしっかりと腕を組んだ芦田くんがいる。
何も、見せびらかせに来なくて良いのに…
「どいて」
僕より遥かに背の高い秋臣を睨みあげて言ったけど、退いてくれる様子はない。
「どけってば」
「お、おい、梁瀬。なんでそんなにカリカリしてるんだよ」
後ろで蒲田が宥めるけど…、悪いのは秋臣でしょ。
僕だって譲る気はない。
「…、蒲田とケンカ?」
「なわけないだろ。一緒に飯行くの。だから道あけろ」
「ねえ、蒲田、俺誘われてないんだけど」
「い、いや、誘うなって梁瀬が言うから…」
「お前は、そこの芦田くんと、どっか行けば?」
「ああ、君、芦田って言うんだ。俺、用事できたから。そこの突き当りが被服室だから」
「…ありがとう、ございます」
芦田くんは、にこやかに秋臣にお礼を言った後、僕を睨んで被服室に入って行った。
ちょっと脳の処理が追いついていないんだけど…、どういうこと…?
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