「えっと…、秋臣と芦田くんってどんな関係…？」 「関係もくそもないよ。あの子が、方向音痴だからって、ここ最近、道案内頼まれてる」 「道案内？」 「そう。だから、名前も知らなかった」 「そ、そう。で、でもさ、道案内にしては腕組んじゃったりして、仲良さげじゃん」 「歩くの遅くてはぐれるのが怖いんだって」 「…、ソウデスカ」 なんとなく、僕が彼に敵視されている理由が分かった。 芦田くん、絶対秋臣が好きじゃん… その下心に気づかないで付き合ってあげてる秋臣もどうかと思うけど… 「そんなことより…、奏は俺を省いて蒲田とデートするんだ？」 「は？デートではないだろ、な、蒲田」 「えーでもぉ、2人っきりだしぃ」 「きめぇ。やめろ」 「梁瀬が冷たい…」 「もう、行こうぜ、蒲田」 「あ、う、うん。柊木はどうする？」 「…、今日は遠慮しておく」 「え、マジ！？」 「奏になんかしたら殺す」 「し、しないって」 結局来ないのかよ。 「行こうぜ」 そう言って僕は、秋臣の横をすり抜けた。 チラッと見たら、秋臣も怒った顔をしていた。 僕が勘違いしたことが悪いことは認めるけど、それでも、腕を組むのは断っても良くない？ 僕ですら、そんな風にして校内を歩いたことないのに。 学校の近くのファミレスに行くと、うちの生徒と思われる客がたくさんいた。 文化祭効果すごいな… 「なあ、梁瀬と柊木って、なんでそんなにすぐケンカすんの？」 「え？」 「いやさ、普通のカップルよりケンカ多くないか？」 「カップルじゃねーし」 「えっ、でも、好きって」 「しらね」 「だからさ、なんでそんなにすれ違うの、君たち」 「だから、しらねーって。秋臣だってさ、本気で僕のこと、好きなわけじゃないんじゃない？女の子に疲れたから、とりあえず手を出してるだけだって」 「そうか？むしろ、キモいぐらいお前のこと好きだろ」 「最初はそうだったけどさ…、僕が好きになるにつれて、どんどん離れていってる気がする」 「うーん…、俺は梁瀬が、柊木の一挙手一投足にいちいち突っかかってる感じがしたけど」 「僕のせいってこと？」 「いやぁ…」 「正直に言って」 「まあ、そうなるかな。梁瀬は知らないだろうけど、柊木ってずっと前から優等生で誰にでも優しかったから、あの1年生の件も突っかかるほどのことじゃないっていうか…」 「…」 確かに、僕は秋臣の家に行く前は、大して秋臣のことを知らなかったし、あれが通常運転だと言われれば納得するしかない。 でも、嫌なものは嫌だし… 「ははは、梁瀬。すっげー難しい顔してる」 「…、笑わなくたっていいじゃん」 「梁瀬さ、最近めっちゃ顔に出るようになったよな」 「え、うそ…」 「なんか、取っ付き安くなった。あやちゃんも、思ったよりも暗くないし、可愛いとこあるじゃんって言ってたよ」 「ぜんぜん自覚無い…」 「梁瀬は思っていることが前よりも言動に表れるようになったんじゃない？ただ、表現し切れてないから、柊木と衝突してる」 「…、つ、つまり？」 「もっと嫌なことは嫌って言葉にして良いって話」 「…、嫌われないかな？」 「さあ？でも、柊木はお前のワガママは喜んで聞くと思う」 「…、分かった。これで嫌われたらお前が責任取れよ？」 「うんうん」