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第63話
「どこか行きたいところある?っていっても、あと15分しかないけど」
「焼きそば食べたい…、あの、秋臣」
「何?」
「…、秋臣が暇だったら…、発表の後も一緒に回ってほしいな…、なんて」
「うん」
「いいの!?」
「いいよ。そういうお願いなら大歓迎だよ」
「…、そう」
今朝までとは違い、ちょっと表情が柔らかくなった。
僕は、ちょっと調子に乗って秋臣の腕に自分の腕を絡めた。
「か、奏!?」
「あ…、ごめん」
驚いた様子の秋臣に、やっぱ調子に乗りすぎちゃったなと腕を解いた。
「いや、いいよ別に。奏が気にしないんだったら」
「い、嫌じゃない?」
「うん」
嬉しそうに笑っている秋臣に安心して、僕は再度、腕を絡めた。
ちょっと歩きにくいけど、久々に触れるのが嬉しい。
これを先にしたのが芦田くんっていうのが、なんとも引っかかるけど。
でも、やっぱり周りからはジロジロ見られる。
「秋臣」
「なに?」
「ワガママ言っても良い?」
「うん」
「こういうこと、僕以外としてほしくないんだけど」
「え?」
「…、何でもない」
「可愛いな、うちの奏は」
「き、聞こえてるじゃん!」
「あー…、抱きつぶしたい」
「おまっ!?そっ、そういうこと学校で言うんじゃねぇよ!!」
「えー…、学校で腕組んできたのは奏なのに?」
「うっ…」
「なんか、今日、すごく素直だよね」
「…、僕と秋臣がケンカするのは、僕の言葉が足りないからだって蒲田が言うから…、ちゃんと言うようにしただけ」
「ふーん」
「…、僕、なんか間違ってる?秋臣は嫌?」
「全然。嬉しいよ、奏が思ってること言ってくれるのは」
「そ、そっか!」
よかった。
ここ1ヵ月燻っていたものが一気に晴れたと思う。
悔しいけど、蒲田に相談してよかった。
「久々に奏の笑顔が見れた」
「え?」
「ずっと傷つけてたよな、ごめん」
「急にどうしたんだよ…。秋臣も悪いかもしれないけど、僕も悪いから。ちゃんと直すから」
「はぁ…、素直な奏、可愛い。天使。無理、尊い」
「お、おい、また発作始まってんぞ…」
秋臣の笑顔と共に気持ち悪さもぶり返してしまった。
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