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第64話

焼きそばを食べたり、いろんなクラスを回っていると、30分なんかあっという間に経ってしまっていた。 「ごめん、奏。俺、そろそろ」 「僕も一緒に行く。観たいから」 「…、そっか、一緒に行こう。絶対成功させる」 「おう。楽しみにしてる」 校舎が賑わっているのに、体育館にも人がたくさんいた。 熱気でちょっと暑い。 「去年は来てないから分かんないけど、体育館もこんなに人がいるんだね」 「そうそう。今年はステージもかなり力入れたって」 「そっか…、こんな大人数で出しものするって…、僕には無理だ…」 「そう?俺にとっては、奏以外はただのヒトって感じがするから、なんとも思わないな」 「もう病気だろ、それ」 相変わらず、秋臣はどこか人間離れしている。 舞台袖に向かう秋臣にお願いして、僕も連れて行ってもらうことにした。 だって、ステージの前、人が多すぎて眩暈がするし… 友達特権ってことで。 袖には、蒲田もちゃんといた。 「おう、お前ら、ちゃんと仲直りしたのか?」 「うん、まあ」 「3割くらい蒲田のおかげ。アドバイスありがと」 「3割か…、えー、もうちょっと高くても良くない?」 「贅沢言うんじゃねぇ」 「鬼かよ」 「そういえば、何するの?」 「何って…、お前、ちゃんと文化祭のパンフ見ろよ!作るの結構苦労したんだから」 「ごめんって…、正直、文化祭どころじゃなかったし」 「俺の責任だから、奏を責めないでくれ」 「…、分かった」 「で、何するの?」 「えっとぉ…、なんか色々」 「下手糞か。本当にパンフ作ったの?」 「つ、作ったけどっ、柊木だって分かるだろ?俺らすることって、結構複雑じゃん?」 「はぁ…、しいて言うなら、バンド隊とパフォーマンス隊に分かれて、2~3曲カバーするんだよ」 「なるほど、的を射てる」 「へぇ。で、秋臣と蒲田はどっちなの?」 「柊木がギターで、俺がパフォーマンス!ちなみに、俺センター!!」 「へぇ、秋臣、楽器できるんだ!」 「まあ、親の影響で」 「かっこいいなぁ~、今度教えてよ」 「いいけど…、奏の柔らかい手を守りたい気持ちもある」 「秋臣が嫌ならやらない」 「…、なんか、梁瀬まで毒されてしまってる」 そんな風にふざけていると、秋臣たちの前のアトラクションが終わった。 幕が下り、メンバーが持ち場に着く。 舞台袖で見る許可は貰ったけど、楽器隊が舞台袖寄りだから、秋臣が近くてすごくドキドキする… イントロを引き始めると同時に、ステージの幕が開きはじめた。

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