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第65話

秋臣たちの発表は、控えめに言ってかっこよかった。 残念ながら、パフォーマンスはあまり見れなかったけど、見てるお客さんの反応を見ても、かなり良かったに違いない。 改めて、秋臣も蒲田もすごいな… それに比べて僕は…、勉強もスポーツも苦手で、特技も剣玉くらいしかない… 僕って、秋臣の隣にいても良いんだろうか? 「やーなーせー!どうだった?」 「あ、う、うん。かっこよかったよ。パフォーマンスはあまり見えなかったけど」 「ええ!?ショ、ショックで死にそう…」 「で、でも!女の子たちが、『蒲田くんかっこいい~』って言ってたから、良かったと思う!」 「え、まじ!?どの子!?」 「…、そういうところが秋臣と蒲田の差だと思う」 「うるせぇ!俺は健全な男子高校生なんだよ。あっちのほうが社会的に問題だろ」 「…、言えてる」 確かに、秋臣の愛情は病的だと思う。 でもまあ、僕は嫌じゃないし、なんならちょっとホッとしてる。 僕のこと、好きなんだなって。 その愛情表現が無くなったときが怖い。 「奏」 「あ、秋臣。お疲れ」 「うん。この後、約束してたけど、機材、俺たちが最後みたいで、片付け任せられちゃったんだよね」 「そっか…、どのくらいかかる?」 「30分くらいかな」 「そっか。じゃあ、待ってる」 「分かった。終わった連絡するから、どこかで待ってて。安全な場所で」 「う、うん」 安全な場所って…、どこ? っていうか、逆に学校に危険な場所なんてある? 30分後か…、ん? 30分後って、僕の休憩時間終わってるじゃん…、積んだ… しょうがない、休憩延長できないか聞いてこよう。 駄目だったら、秋臣との約束は蹴るしかない。 調理室を覗くと、3~4人の調理担当がいた。 リーダーを見つけて話しかける。 「あ、あの…」 「あ!梁瀬くん。あれ?休憩まだ終わってないよね?」 「そ、それなんですけど…、僕の休憩、延長してもらえないかなって」 「あぁ、なんだそんなこと。いいよ」 「え!?」 「昨日、一日中サボってた奴捕まえたから、そいつに全部任せるし」 「い、いいの…?」 「いいよ。それに、梁瀬くんには去年、めちゃくちゃ頑張ってもらったし」 「去年…?」 「1年生のときはクラス展示、8割梁瀬くんが作ってくれたじゃん」 「そ、それは…、僕、帰宅部だったし」 「それでも、めちゃくちゃ助かったから。今年は梁瀬くん、頑張らなくて良いよ」 「うぅ…、ありがとっ」 「なんかさ…、梁瀬くんってやっぱり可愛いんだね」 「ファッ!?」 「ちょっとキュンときちゃった」 「え。えっと、その、僕、もう行きます」 「はーい。楽しんで~」 なんか、女子に可愛いって言われるの…、複雑。

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