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第68話

「いいのかよ、ファンにあんなこと言っちゃって。たちまちに噂は広がるぞ?」 「いいよ、別に。正直、奏に出会ってからは周りの人からの人気とかどうでも良くなったんだよね」 「それはそれで複雑だなぁ。嬉しいけどさ、ファンにとっては秋臣を悪い意味で変えたってことだろ?」 「ファンだなんて大げさだよね。俺、一般人なのに」 「ほんとにな。お前、よく見たらイケメンの皮を被った変態だし」 「やだなぁ、奏限定だよ」 「それがきめぇって言ってんだ」 「ふふ、さて、周りも落ち着いてきたし、場所移そうか?見たいところ、まだまだあるでしょ?」 「当たり前だ。とことん付き合えよな」 「可愛いなぁ、もう」 「…」 どんなにキモいと言ってもへこたれない秋臣… 鋼のメンタルだな、見習おう。 変態には成り下りたくないけど。 それから、お化け屋敷に行ったり、数少ない他クラスの友達の模擬店に行ったり、校内デートみたいなことをした。 中学の頃から何回か文化祭は経験したけど、今年が1番楽しい自信がある。 きっと、このままだったら、来年ももっと楽しい。 来年、俺も秋臣も何してるんだろう。 受験もあるし、文化祭終わったらその準備でバタバタしそうだな。 秋臣たちの部活は、かなりの強豪だから、インハイ出場もあり得る。 そしたら、秋臣はもっともっと忙しいだろうな… 「…で、…奏!」 「うわぁ!?びっくりした」 「驚いたのは俺の方だよ。全然、呼んでも気づかないし」 「ごめん。ついうっかりトリップしてた」 「狡い。旅をするなら俺も連れてってよ」 「いや、どうやって連れてくんだよ」 「HRも終わったから、早く帰るよ」 「え、もう!?売り上げ、どうだった?」 「5万だって。ランキングは来週の全校朝会で発表だってさ」 「う、打ち上げは?」 「それが、1番の候補だったところが3年生に取られたみたいで…、来週になったよ」 「そ、そっか」 「うん。っていうか、本当に何も聞いてなかったんだね。売上出た時なんか、みんな盛り上がってたのに」 「え、そ、そうだった?」 「珍しいよね、奏が考え事なんて」 「うるさいな、僕だって考え事なんてくらいするよ!」 「何考えてたの?っていうか、解決した?」 「…、解決はしてないけど、教えない」 「そっか…、残念だな。奏が何か困ってるんだったら、俺、助けてあげたいんだけどな」 「うっ…」 悲しそうに微笑む秋臣を見ると、なんだか心がズキズキする。 そんな顔すんなよな、マジで… 「大したことじゃないし、ただの杞憂かもしれない」 「それでも、聞きたい」 「そのっ、来年も…、文化祭、秋臣と回れるかなって考えたんだけど、受験生だから忙しくなるかなって、あと、秋臣たちがインハイとか行ったら、一緒にいる時間も減るかもって思って…」 「うん」 「うん、じゃねぇよ。寂しくないのかよ」 「ふふ、でも、学校に通ってるうちは毎日会えるし、俺は器用だから、全部両立できるし、奏との時間も大切にできるよ?」 「…、なんだそれ、ほんとムカつくなお前」 「ふふ。俺、奏のためだったら、どうにでもなれる気がする」 「こえーよ」 「で、今日、どうする?」 「…、し、仕方ないから久々に家に行ってやるよ」 「うん。嬉しいな」 「…、ほんと、ムカつく」 僕の抵抗や悪態なんて、屁でもないとかわす秋臣の余裕っぷりに腹が立つ。 でも、その安定感が妙に安心する。 変なことで悩む必要なんか無かったかもな。

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