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第69話

「久々に来たけど、やっぱでけぇな」 「そうかな?」 秋臣の部屋をキョロキョロと見渡す。 「あ、今日、お母さんいないんだった。ちょっと飲み物とってくるね」 「お、おう」 ってことは、2人きり!?2人きりなのか!? 妙に意識して、緊張してしまう。 ふと、こないだ来たときはなかったものを見つけた。 棚に大量の袋が置いてある。 しかも、ジップロックみたいな密封された袋。 中身は…、布? 手に取ると、ラベルが貼られていた。 『奏の涙』…? え、僕の涙ってどういうこと…? しかもこれ、うちの学校のネクタイと同じ色… まさか… まさかと思って、ほかの袋を確認すると、『奏の唾液』と『奏の精液』というものもあった。 マットのような生地が入った袋には、『奏の潮』と書かれていた。 これって…、まさか… 「あ、見ちゃった?」 「うわあぁぁぁあ!!?」 突然、背後から秋臣の声がして、飛び上がる。 いや、見えるようなところにこんなものを置いているアイツが悪いけど、なんだか、自分が後ろめたい気持ちになっていたから、ついびっくりしてしまった。 っていうかこれ、怒っていいよな? 「お、お前!これ!!」 「うん、奏の体液コレクション」 「き、キモい…。これ、犯罪だろ!?」 「どうして?奏から盗んだものはないよ?」 確かに、マットもネクタイも、枕と思われる布も、全部秋臣の私物だ。 「そ、それはそうだけど…、なんか色々アウトだろうが!」 「だって、奏との時間が少なくて寂しかったんだもん」 「だもん、じゃねぇよ!このド変態!!最低だ!」 こんなもの保存されて、色んなことに使われていたと考えると、すごく鳥肌が立つんだけど。 コレクションを全てゴミ箱に投げ入れる。 「ああ、ちょっと、何してるの!?」 「ゴミはゴミ箱って教えられなかったか、このド変態」 「ゴミじゃないよ!宝物だ!」 「…、いよいよ気持ち悪いな、お前」 「俺の…、コレクション…」 床に膝を着いて落ち込む秋臣を見て、なんか悪いことしちゃったな…って思った。 いや、待て待て、こいつの将来のためにも、こんな気色悪いことは辞めさせるべきだ。 「こんなもの無くても大丈夫なくらい、一緒にいてやるから元気出せよ」 「奏っ…」 「うわぁっ!?」 僕が尻餅をつく勢いで、秋臣が抱き着いてきた。 「はいはい、ドードー」 落ち着けるために、トントンと背中を叩いてやる。 でっかい犬みたいだな。 こいつのファン共に、この気色悪い姿、見せてやりたい。

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