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飾り立てられました

 日が沈むと確かにオレは多少女顔というだけの、美形でもなんでもない顔に戻った。すぐさまドレスを脱ぎ捨て男の時の服を着る。ドレスってのはややこしい作りだがなんとかなった。  夕食の時に魔女と再会し戻るために条件をつけられたこと、夜だけ戻ること、城の舞踏会に行くことになったことを両親とセシルにかいつまんで伝えた。  オレが転生者であること、乙女ゲームうんねんは言っていない。戻るための詳しい条件も。息子の頭がおかしくなったと思われるからな。  セシルは元に戻ったオレを見て「つまんない」とふくれていたが、「でも朝には戻ってるんだよね」とすぐ機嫌を取り戻した。  戻るって言い方はおかしいがな。  男のオレが本来の姿なんで。  魔女との再会は両親を驚かせたものの戻る兆しが見えたので喜んでいた。  社交界デビューすることになったのも普段のオレは出不精なので、「高等貴族の子息とお近づきになりなさい」と好意的だった。女の姿でお近づきになっても仕方ないと思うが……。  オレは一週間後の社交界デビューに向けて、セシルと共に焼き付け刃であるがマナーやダンスを教わることになった。一応社交界デビューはすんでいるが、男の時の話である。それも社交界デビューは貴族の子息の義務だと親父がうるさいから一回行っただけ。女性側のダンスやマナーは心得ていない。  一週間ではやはり完璧に身に付けるには無理がある。  諦めた先生からは「極力壁の花となり、簡単な受け答えしかしないこと。ダンスもお断りすること」と最後の授業で言われた。ちなみにセシルはそれなりに令嬢としてはできる子である。  部屋の中にはオレの叫び声が響いていた。 「いってぇ!もういい。やめてー!」  舞踏会に行くためにコルセットを締め上げられていたからだ。  オレの懇願にもメイドたちの手は緩まない。 「頑張ってください、お嬢様!セシルさまも頑張ってらっしゃいます」  お前らオレなんかした?日ごろの憎しみこめてねぇ?  コルセットのひもで綱引き大会でもしてんの?秋の大運動会開催中ですかこの野郎。  そしらぬ顔してドレスで可愛くきゃっきゃしてるけど、女の子たちってこんな苦労してんのか。  美しくなるって大変だな。尊敬するわ。  オレとセシルはメイドたちの力で飾り立てられた。もともと美少女のオレが「あれ?どこかの王女様かな?」ってくらい美しくなっている(異論は認める)

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