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女体化でも社交界デビューしました
国王夫妻、第一王子のレオナルド殿下の前に進み出て淑女の礼を取る。
「リディア・メイフィールドです。フランシス伯爵の遠縁にあたります」
「セシル・フランシスです」
この時ばかりはセシルも一緒に挨拶した。
親戚なのに別々に挨拶すると不自然だから。
メイフィールドというのは祖母の姓だ。適当すぎたかもしれないけど、ぱっと思いつかなかった。下手な名前をつけてほかの貴族とかぶると面倒くさいし。
アルバートでは挨拶したことがあるが、数えるほどだし、王族の前に出ると緊張するなやっぱり。三人そろうとオーラが凄まじい。
「リディアは今日がデビューだそうだな」
「は、はい!そうです。不手際がございましたら申し訳ございません」
国王陛下に声をかけられ、緊張しながら答える。
直々にお言葉を頂くのは稀だ。セシルも声を出してはいないが、驚いているのが分かる。
「あとでぜひダンスのお相手願いたいな。ああ、セシルもね」
にこっと微笑む殿下。
殿下にまでお声かけ頂けるなんて思ってもみなかった。
「は、はい!喜んで」
「喜んでお受けいたします」
ダンスをお誘いいただけるのは大変光栄なことだ。
セシルの声が上ずっていたのも仕方がないだろう。
直接お声を頂いたのはアルバートもほとんどなかったけれど、オレより年下なせいか殿下は子犬のような印象だった。殿下に子犬みたい、と言うのは失礼かもしれないが。
いつも微笑みを絶やさず、誰にでも優しいので親しみがある。
王位継承者としてはもうちょっと凄みとかがいるのかもしれないけど、アルバートとしては好印象だった。
「初めてだと緊張するかもしれないけれど、楽しみなさい」
「はい。ありがとうございます」
女王陛下からもお言葉を頂いて、オレとセシルは挨拶を終えた。すぐさま次の令嬢が進み出る。
はー緊張した。
「すごいリディア!さすが私のお姉ちゃん」
会場の隅の方に来ると、セシルがこそこそと耳打ちしてきた。
「お姉ちゃん……ああ、うん」
否定しようと思ったが、誰かに聞かれてしまったら面倒なので、否定しなかった。
近くでオレたちの会話を聞いている人はいなそうだったが、一応。
「これだけの美人なら当然じゃない?ああ、セシルも可愛いよ」
オレくらいの美少女だと謙遜する方が嫌味だ。相手はセシルだし。
セシルが可愛いのも本当。兄補正もあると思うが。
この舞踏会ではオレの次に可愛い。
「わぁー。お姉ちゃんくらい美人だと腹も立たないなー」
なぜか嬉しそうなセシル。
うん。そうだろう。
「お姉ちゃんどうする?私ダンスしてこようかな」
先ほどから遠巻きにしている男どもに見られている。声をかけるタイミングを計っているようだ。
「んー。オレ、じゃない。私はお腹が空いたから食事をしてるわ」
「え?さっきも食べてたよね。ローストビーフとか」
見てたのかよ。
「まぁいいや。帰るときは声かけて」
「分かった」
セシルが男どもににこっと微笑むと、我先にと寄ってきた。
うん。入れ食いって感じ。
見届けたオレはさっきの食事が並んでいるテーブルに足を向けた。
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