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ダンスから逃れられませんでした
おおさっきより料理が増えている。
主催者である国王陛下たちが現れてからが舞踏会のスタートであることを考えれば、先ほどまでは準備段階と言えるだろうから当然と言えば当然だ。
舌なめずりしそうになるのをこらえる。
表面上は落ち着いた淑女に見られているはずだ。
しかし、コルセットつけられてると全然入らないんだよな。
ダイエットに最適だわ。もっともリディアはダイエットの必要はないが。
皿を手に取って手始めに取るものを選んでいると、
「レディリディア」
……この声は。
振り向くのが嫌だ。
だがロックオンされた以上、無視するわけにはいかない。
恐る恐る振り返ると、
「ここでお待ちすればあなたがいらっしゃると思っていました」
やっぱりあいつだった。
クスクス笑いながらコンフェラートがワイン片手にやってきた。
待ち伏せされているとは。
こいつの中では食いしん坊キャラに認定されてしまったのかもしれない。別にいいけど。
「先にダンスをお受けしていただけませんか?
お食事の後では踊りづらいでしょうから。あとでいくらでも一緒にお食事しましょう」
いや、別に一緒に食ってくれなくても一人で食うけど。
断りたかったのは山々だが、逃げられそうにない。
オレは後ろ髪をひかれる思いで何も載せられなかった皿を戻した。
「ダンスは不慣れなのですが、それでよろしければ」
にこっと完璧な笑みを浮かべると、コンフェラートは一瞬息を飲んだ。
だがそれは一瞬ですぐに微笑んだ。女ならイチコロだろうさわやかな笑みだ。
「私はダンスが得意なのでリードしますよ。リディア」
ふんっ。
よろけたふりをして足踏んでやろう。もちろんかかとのヒールでな。
コンフェラートは自分で「得意」だと言えるほどにはうまかった。
嫌いな奴と手を繋ぎ、体をぴったりと寄せ合うのはすっげーいやだが。
女性パートは不慣れなのに(というかそもそも男性パートも上手くはない)それなりに踊れている。ダンスは相手がリードしてくれればうまく踊れるのだ。
美男美女のオレたちは周りから注目されていた。
踊ってるやつらですらちらちらこっちを見てるので、あちらこちらでぶつかったり、足を踏んづけたりしているようだ。
女から人気があるコンフェラートが踊っているあの美少女は誰だと思われてんだろうな。
足を踏んでやろうと何度かチャレンジしたが、いずれもそつなく逃げられてしまった。
「リディアは見かけによらずやんちゃですね?」
「そうですか?ウフフ」
ウフフて。鳥肌が立ちそうだ。言っているのは自分だけど。
何度も足を狙われているのに気づいているようだが、気にしていないようだ。
それもこれもオレが超絶可愛いからだろうなぁ。アルバートとしては足の一つも踏めなかったのは残念だが。
曲が終わりオレのたくらみは失敗に終わった。
「楽しい時間をありがとうございました。コンフェラート様」
あー終わった終わった。
一応儀礼的にコンフェラートに頭を下げる。
まぁうまく踊れたから楽しかったけどな。それなりに。
「ではお食事に行きましょうか。私はまだお相手いただきたくもありますが」
「え……いえ、コンフェラート様を独り占めにしてはほかの女性たちに嫉妬されてしまいますので」
「それはあなたも同じでしょう?」
うーん。
正直こいつと食べる食事は上手いと思えない。
どうやって逃げようかな。
考えあぐねていると、周囲がざわめいた。
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