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王子様とダンスしました
「失礼。次は僕とお相手願ってもいいかな?」
レオナルド殿下だ。
「残念ですが、殿下がお相手では仕方がありませんね。私はこれで失礼します」
殿下に一礼してコンフェラートが離れた。すぐに令嬢たちが集まってくる。花に集まる蝶のようだ。んーいや、花って言うと癪だななんか。
ともかく殿下のおかげでコンフェラートから逃げられたのは感謝だ。
「お誘いしてもいい?リディア」
「もちろん喜んで、殿下」
正直ダンスは一回でよかったけど、さっき殿下と約束したしな。
コンフェラートより殿下といるほうが断然いい。
オレが殿下の手を取ると、その顔に喜色が浮かびぱたぱたと揺れる尻尾が見えるようだった。
うーん。可愛い。
演奏家たちが次の音楽を奏で始め、殿下がオレの腰を抱き寄せた。
殿下の身長はオレより少し高いくらい。男性としては平均的な身長だ。まぁ若いからこれからまた伸びるのかもしれないが。
ともかく長身のコンフェラートと踊っているときよりも顔が近いのですごく気になる。
王族のご尊顔が!
すぐ間近に!
なんかいい匂いもする。
言っておくがオレは男に興味ないので、単なる事実としてそう感じただけで、匂いで興奮したりはしていないのであしからず。
コンフェラートもいい匂いではあったが、あいつ香水つけすぎ。
顔が近く似合って緊張したのは殿下も同じようで、優雅にステップを踏みながらも顔を赤らめている。
「か、顔近いね」
「そう……ですね」
オレもつられて赤くなった。
コンフェラートだったらここまで顔が接近しても平然としていただろうな。
男に、ましてや王族である殿下に言うのはかなり失礼に当たるのだが、やっぱり可愛い。
こんな弟なら欲しいなー。コンフェラートみたいな兄はいらね。
「お上手ですね、殿下」
コンフェラートほどではないが、王族である以上ダンスもそれなりにさせられているのだろう。殿下の腕前も十分うまい部類だった。
「たしなみ程度だけど。リディアも上手だよ」
「ありがとうございます」
お世辞だとしても嬉しい。
リディアのダンスが上手く見えるとしたら、やっぱり殿下のリードが上手いからだ。
和やかに殿下とのダンスが終わった。
まだリディアと踊りたそうだったが、殿下が一人の女と続けて踊るのはよろしくない。「婚約者候補なのか?」と憶測されるからだ。
「また会えるかな?」
「はい。多分。楽しかったです。殿下」
「僕も楽しかったよ。リディア」
短く挨拶を交わすとまた音楽が始まり、殿下は次の女性とダンスを始めた。
今度こそ食事に行くかな。
いや、待てよ。
十中八九コンフェラートが張ってるな。
他の男に声かけられるのも嫌だし帰ろ。
セシルに声をかけたが、もう少しいると言う。
「あまり遅くならないように」とくぎを刺して、オレは先に帰ることにした。
もう日が暮れてきた。もたもたしていたらアルバートに戻ってしまう。
オレは伯爵家の馬車に乗り込んだ。
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