「ン、夢で俺そんなこと言ってたのかァ」 「あぁ。それで一週間ぶりに目が覚めたんだ」 ベッドで身体を起こして夢の話をすると、ガドはふぅんと何やら考え始める。 ──俺が目を覚ましてから今日で三日経った。 四肢はくっついているが体力が落ち、動くのはあまり良くないと診断された俺。食事も徐々に回復食からなので、大事を取って仮部屋でベッド生活をしている。 その間に見るも無残に壊れてしまった俺達が住んでいた一棟を、急ピッチで復興しているらしい。今はもうかなり再建が進んでいるみたいだ。 あの棟は魔王を始めライゼンさんや官吏の部屋があったので、職人を総動員して全力建築中だと言う。 アゼルも流石に申し訳なく思ったのかポケットマネーを黙ってライゼンさんに押し付けていたそうだ。 それからあの絵画の破片はと言うと、アゼルのとっておきの魔法である闇の世界に飲み込む魔法で、永久に出られないよう閉じ込めたらしい。 落ちるとアゼルでも取り出せないとか。 そして死ぬわけでもなく、漂い続ける。リシャールの場合は幽霊なのでもし存在が続いていても寿命で死ぬ事ができず永遠にそのままだ、と、真顔で言われた。 絵画が砕けて聖法がなくなっても霊体は霊体だから、念の為の、無限地獄。 そういう事の次第は、一昨日に初めて色々聞いた。 俺はアゼルと泣き疲れてあの後二人でまる一日寝ていたからだ。御見舞には普段から親交のあるみんなが来てくれて、俺は申し訳なく思い萎縮していた。 お見舞い合戦も落ち着いた今日。 様子を見にやってきたガドが話し相手になってくれているから、眠っていた間に見た夢の話をしている所だ。 俺の話を聞いて顎に手を当てていたガドは首を傾げ、そういえばと呟く。 「お前が寝てる時なァ？夜中に魘されてる事多くて、ブツブツ言ってたから、俺返事した事あるぜィ。ちょうどお前が魔王と寝てた夜だな」 「あぁ、なるほど。それで夢の中にその言葉が出てきたと言う事か…」 「ンン。あん時は魔王も魘されててなァ……大体似たようなコト言うから、お前ら」 「アゼルも？」 こくりと呆れたように頷かれて、俺は歯がゆいような気持ちになった。 だからか。やっぱりアイツは眠れていなかったんだな。 魘されているのを見た事はなかった。アゼルは俺が眠っていた間の自分の様子を話さなかったが、寝付きのいいアイツがそうなるくらいに気が休まる事がなかったのだろう。 きゅぅ、と眉間にシワを寄せた俺を見て、ガドは俺の眉間に物凄くフワッとデコピンをした。うん、ピンしてもいいからな。 俺の身体を気遣っているのだろうが、相変わらず過保護だな。 「お前らの辞書には人に頼るって言葉が載ってねェの？」 けれど予想していなかったセリフを吐かれ、キョトン、としてしまった。 不機嫌そうにビチビチ尻尾を揺らしながら、ガドは俺を見つめる。