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第97話

読めなくてもアゼルが名前に興味を持ってくれたのが嬉しいので、一緒になって指を指す。うん、自分でも単純だと思う。 「そうだぞ。オオカワ・ショウリュウだ」 「ウォーカー・シャォルゥー?」 「ふふ、やはり伝わらないんだな」 異世界人の名前は正式に歴史に残らないように世界の力が働くらしく、聞き取りにくいそうだ。 アゼルはちゃんと聞こえない事にむすっと気に食わない表情をして、苦々しく画面の文字を睨む。 それを見たリューオは首を傾げながら自分を指差した。 「ちなみに俺は篝 雄緒(かがり ゆうお)だけどよ、なんて聞こえてんだ?」 「あぁ?お前は……クァーリ・リュルーウォだ。お前らの名前、こっちからすりゃ水の底からスローで喋られてるみてぇなんだよ」 本当の名前がちゃんと理解できなくて不満たっぷりのアゼルは、リューオの名前もやはりちゃんと聞こえていないようだ。 リューオはほら、と自分のステータスを表示して名前の所を指差すが、アゼルには読めないので眉を顰めている。 〝篝 雄緒(リューオ)  職業:勇者  スキル適正:剣技・炎魔法・格闘術・物理耐性・魔法耐性〟 スキル適正が三つあるのは凄いと言ってくれたが、リューオは五つもある。本物の勇者らしいステータスだ。 ちなみに耐性スキルはレアだぞ。それが二つも。 読んでみろよ、読めるかアホ、なんだとコラ、やんのかあぁ?と仲良く戯れている二人を眺めて、だから人間の身で魔王の喧嘩相手が務まるんだろうな、と納得した。 「つか魔王のステータス見せろよ」 「はぁ?まず俺が自分の見た事ねぇぜ。魔界神殿ねぇかんな。魔族はスキル……っつか、生まれつきの種族の能力ぐらい自分で知ってるし、役職は名付けの水晶で決まるし」 「なるほど、文化の違いか」 「へぇ……じゃあ尚の事見てみようぜ〜ッ!弱点見つかるかも知んねェぞ?」 「それが本音だろクソ勇者」 ニヤニヤと目を輝かせたリューオの提案に、アゼルはチッと舌打ちをした。 それから隣に座る俺の体を抱きしめてリューオの相手で減った英気を養い始める。 そんなアゼルに乗り気じゃないのを察したのか、リューオは「なぁ〜シャルも気になンだろ?」と俺に振ってきた。アゼルの頭がぴくっと跳ねる。 そうだな……そもそも魔族のスキルってどの程度あるのかすら人間は知らないからな。 そういう意味では気になるかもしれない。 でもアゼルがいいよと言うなら俺はなんでも知りたいが、言われないなら無理にとは思わないな。 「俺はアゼルがどうあれ構わないから、嫌だと言うなら鑑定しなくていいと思うぞ。アゼルのステータスは、きっと凄く強くてかっこいいんじゃないかとは思う」 「よしクソ勇者、さっさと好きなだけ俺のステータスを見やがれ。まぁ、強くてかっこいい俺には弱点なんかねぇけどな!フフン。クックック…!」 「ニヤニヤしてんじゃねェよ潔い程手のひらクルクルしやがって」

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