99 / 615
第99話
「ステータス」
フォン、と声と共に音がして、リューオがかざした手の前に画面が現れる。
俺達からすると文字が反転して読みにくいんだが、ちゃんと見えているリューオはピシッと固まってしまった。
「おい、この俺のステータス見てなんで固まってんだ。魔族は見れねぇのか?」
「はー……マジクソふざけんな案件だわ……ゴリラってかキングコングじゃね…」
ツイ、とリューオが手のひらを動かして、訝しむアゼルと紅茶を飲んでいる俺に見えやすいように画面を動かしてくれた。
そこに映っていたのがこちらのステータス。
〝アゼリディアス・ナイルゴウン(第一形態)
職業:魔王
個人固有:魔眼
種族固有:全能力値10%アップ(夜限定)・常時HP5%自動回復
スキル適正:剣技・格闘術・闇魔法・魔法陣・常時威圧・殺気察知・器用・怪力・物理耐性・魔法耐性・全状態異常耐性・魔物言語・黄金律・悪運・変態・収集癖〟
「変態ってなんだ?」
「おっ俺は変態じゃねぇだろッ!」
「そこかよッ!」
画面を覗きながら首を傾げる俺にアゼルが弁明をし、リューオは額に青筋を浮かべてソファーをパシンッと叩いた。
いや……すまん。
そこしか気にならなかった。俺は一度戦った時から魔王チートオチには慣れているからな。
もう魔族のポテンシャルに驚くのはきりがないと学んだのだ。
周りが化物ばかりなので忘れがちだが、基本的に一騎当千なのだからな。
しかも第一形態と書いてある。
恐らく第二から最終形態まで種族固有のスキルあたりが変貌するんだろう。姿が変わるからな。うん、あり得る。慣れた。
アゼルはリューオを無視して「収集癖……ハッ!」と呟き画面をグリグリ消そうとしている。消えないぞ。
ズズ、と紅茶を啜り、少しいたたまれなくなった。
宝物庫の俺コレクションの事か……しかしスキル適正は生まれつきなので、コレクターの素質が大いにあったわけだ。少し変態気味なのもな。
ちなみに後天的にスキルを取得してもステータスには反映されない。
例えば凄く修行して料理の達人になったとしても、元々素質がなければある筈の料理スキルは非表示なのだ。
ステータスの神様も流石にそこまで把握してられないのだろうか。
「おま、落ち着いてんなァ〜!テメェの旦那ゴリゴリのゴリラだぜ?デコピンで脳味噌スイカみてぇに弾け飛ぶんじゃね?」
「ん?そこはいつも力加減が完璧だから大丈夫だ。悪運スキルが気になるが…」
「悪運ねェ……あ〜、だから騒動起こしてもなんやかんや丸く収まってんだろ多分」
「いやまず騒動起こしたくねぇんだよ俺は…!スキル消せねぇのか…!?変態とか変態とか変態とか…!」
なるほど。
俺とリューオはアゼルの波乱万丈をなんとなく納得した。スキルのせいか。取り外し出来ないからな。
アゼルは指でゴシゴシとまだ画面を擦っているが映像のようなものなので指はすり抜けるし消せるわけもなく、黒いオーラを出している。
ともだちにシェアしよう!