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第100話

そんな変態スキル消滅を試みるアゼルに、リューオは腕を組んで首を傾げた。 「魔王はよォ〜このステータス持っててなんで幽霊にしてやられてんだ?」 「ふぐ…っ」 ピシャァァンッ、と雷でも落ちたような音がアゼルから聞こえたような錯覚。 いけない、それはいけないぞリューオ。 「その話はやめてさしあげろ……そこはまだデリケートなんだ…!アゼルが塩をかけられたナメクジのようにフニャフニャとテーブルに突っ伏してしまったぞ…!」 「普段強気なくせにお前関連の失態クソメンタル弱いなコイツ…」 リューオに責められぐったりとテーブルに突っ伏したアゼルの頭を、俺は慌ててよしよしと撫でて復活を試みる。 こう見えてナイーブなんだぞ。 アゼルは負けた事がなかったし自分の攻撃が一切通じないなんて困った状況になった事がなかったんだ。 密かにかなり自信喪失中である。 人質と言う存在が大きかったし霊体だから仕方ないんだが、こっそり魔王の癖に神官の術の本を読んでいたので負けず嫌いを発動しているんだろう。 神官の本……所謂聖書を熟読する魔王なんて魔界歴でも初めてなんじゃないか。 神殿すらないので結婚式もあげない魔界の魔王が、まさかの愛読書チョイス。 魔族封印の術とかをどんな目線で見ているのだろうか。確かフルネームと複雑な魔法陣が必要だった気がする。 「クックック……今まで魔物を狩ったり人間を焼いたり天族を仕留めたり精霊族を排除したりして、驕っていた俺が馬鹿だったぜ……時代は霊体狩り、神官最強……すげぇ勉強したのに、俺闇魔力しか持ってねぇから聖法使えなかったしな……ポンコツ魔王とはよく言ったもんだ……ククク……」 だめだ。ポテンシャルの持ち腐れを嘆きすぎて、不遜で尊大なブレないアゼルがポンコツ魔王を公認し始めている。末期じゃないか。 「リューオ、このままじゃアゼルがナメクジのようにトロケてしまうぞ…!どうすればいいんだ?」 「あーもう溶けてもイイんじゃね?抱きつき魔だし変態で収集癖……ストーカーだし。束縛スゲェ上にシャルとそれ以外で対応が違うから何度脳内で刺したか…」 「よくわからないが溶けたらダメだ、寂しい。アゼル、帰ってこい…!」 全く心配した様子のないリューオに対して、俺だけがかなり焦っている。 ゆさゆさよしよしと慰めてもしょぼん、と致命傷を受けたアゼルはしょげるばかりだ。 霊体最強説浮上だったが、攻撃力皆無だったからそう嘆く事もないんだぞ。恐らく全状態異常耐性のあるアゼルなら呪いすら効かないだろうし。 俺がいなければ圧勝できたと思うんだが……ええと、慰めるにはどうしたらイイんだ。 これ程撫でても復活しないなんて珍しい。 うーんと悩み込んだ俺は一ついい方法を思いついた。 ドサッ 「よい、しょっと。ほら……アゼルは強くてかっこいい魔王様だろう?あんまり落ち込むな、好きな人を卑下されると俺が悲しむ」 「ぅぐ…!」 膝枕、今度は落ちないように気を付けて。 元気付けようとどうにか引っ張って膝の上に寝かせると、アゼルはネガティブ発言を止めて固まってしまった。よし、成功だ。 次に幽霊が出たら俺も戦うのに、何を気にする事があるんだ。 二人で守り合えば無敵だと思う。俺が頑張ってお前を守ってみせるぞ。

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