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第125話
♢
「ふう……なんだか今日は騒がしい日だな……」
執務室から逃げ出した俺は、気を落ち着けるべく無心でクッキーを焼いてから、スッキリとした気持ちで部屋に帰ってきた。
こう、ひたすら生地を捏ねていると思考が落ち着くんだ。
作ったクッキーは少量なので召喚魔法域に保存しておく。材料にもよるが大体一週間くらいはもつぞ。
この短時間でちょっと濃い出来事が多すぎた。主にアゼル……と言うかオンリーアゼルだな。
アゼルがいつも帰ってくる時間まではまだ少しあったので、俺は一人部屋で軽くストレッチをし、のんびり読書をする事にした。
フカフカのソファーに腰掛け、前に読んだ時はまだ途中だった本を開き、どこまで読んだかとページを捲る。
カリカリ
「ん?」
そうして読書を始めて幾分もしないうちに、扉の外からカリカリとひっかくような音が聞こえた。
誰か来たのか?
んん……それか今日はアゼルがちょこちょこ現れるから、もしかして三度目があるのかもしれない。
俺は立ち上がって扉に向かった。
今日の遊びはなにが楽しいのかわからないとは言ったが……アゼルが機嫌よさそうならそれでいいか。
「次はどんなオプションがついているのか、だ」
クスリと笑いながら扉に手をかける。
ガチャ
「どうし、ん?」
そしてアゼルの姿を想像して開いた俺は、予想していなかった来訪者にキョトンと目を丸くした。
「お前はあの時の犬じゃないか」
パタパタ
俺の言葉に反応してか、来訪者──以前アゼルの命令で桃を届けてくれた真っ黒な大きい犬は、つぶらな瞳で俺を見つめて、尻尾を振った。
中庭に専用厨房を作った時のモフモフ大会以来だ。久しぶりに会ったが、元気そうで良かった。
俺はすぐに扉を大きく開き、犬を部屋の中に招き入れた。
部屋に入った犬をにこにこと追いかけソファーに座り直すと、犬はずっと口に咥えていたものを俺にどうぞと渡してくる。
「これは……雑誌か?」
「ウォンッ」
俺の言葉に、犬がひと声あげた。
なにか咥えているのはわかっていたが、どうやら今回はこの雑誌を届けに来たようだ。
相変わらず賢い犬だな…、と感心してよしよしと頭をなててあげると、途端揺れていた尻尾の動きが活発になる。
それを見て和みつつも特に何も考えずに受け取った俺は、何気なくパラ、と中を開いた。
パタン
「…………」
そして黙って閉じる。
ええと、なんでこんなものを犬が持っているんだ…?
そして何故不満そうに読めと言わんばかりに鼻先で俺の膝をつつく。
犬が持ってきた雑誌は、様々なけしからん内容の記述や文章と、各絵師のこだわりが盛り込まれた官能的な挿絵がある……所謂、エロ本だった。
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