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第124話(sideアゼル)
ゴホン。
そんな独占欲は置いておいて。
現在俺の心をドキドキムラムラと乱して仕方ないのは、乱交プレイを却下した後の何気ない爆弾発言。
『一人遊びは得意なんだが』
「とっ得意って……っ、俺が仕事してる間に満足できなかった性癖を満たしてたのか……!なんっ、なんてやつだ、エロだっ、エロエロだっ!」
「魔王様のエロのハードル、めちゃ低だよねぇ〜。童貞、いや童帝丸出しだっちゃ」
馬鹿野郎!こちとらスケベなシャルになればいいなぁ……と思いを馳せていたのが実際スケベだった衝撃的事実に、トキメキを抑えられねぇんだよ!
俺はパシパシと自分の膝を叩き、恥ずかしそうに逃げていった背中に身悶える。
顔が熱くて耳がぺたんと情けなく倒れるが、尻尾は後ろでパッタパッタと揺れているのがよくわかった。
そんな俺にマルガンはニヤァ〜と変態じみた笑みを浮かべて、チッチッと立てた人差し指を左右に振った。
「初だねぇ〜!でもお妃ちゃん、人妻だよ?しかもまだまだ若いっしょ?いや魔族的に学園生年齢、青春だよね〜!」
「フフン、人妻だ。若妻だ。俺のだぜ」
「だったらえっちに決まってんじゃあん!?人妻なんてエロいもんよ!」
「はっ?人妻になるとエロくなんのか?」
「そそっ!まぁまぁまぁ耳貸してみ。ようく聞いてね?」
そう言って嬉々として隣に座ってきたマルガンに耳を近付け、俺はゴクリとツバを飲む。
「人妻ってのは旦那との夜にも熟れた、酸いも甘いも噛み分けた大人っしょ?」
「まあな」
「旦那は仕事に行き、昼間は自分一人……しかもお妃ちゃんはお城からでちゃだめなワケよ。娯楽に乏しいってカンジじゃん?」
「ぐ……仕方ねぇだろ、仕事はしねぇとシャルを守ってやれねぇ。なにかあったらまずいからあんま外出したくねえし」
城下町の魔族だって入れ代わり立ち代わりしてるんだ。俺のものと知らないクズが、人間だと侮って傷をつけるかも知れねえだろ。
しかしマルガンは非難するでもなく、ニヤニヤとした愉快な表情を崩さない。
「それよ!箱入りのお妃ちゃんはよそに男を作れないじゃん?城で見繕うと魔王様が塵にするだろうしぃ。でもでも、快感を覚えた体はふとした時に切なく鳴き出すはず……!」
「そっ……そんな……っ!?」
マルガンのまるで見てきたように語る言葉に、俺はカッと赤くなって焦った。
アイツ、そういう気持ちで普段昼間過ごしてんのか……!?
いや、前一日一緒にいた時は全く……でも俺がいたらそうはならねえか、そうか、うん、うん。
しかしそんな状態で俺が仕事の後部屋に戻って来た時、涼しい顔でおかえりって抱きしめてきてたのか?
あんな何事もなかったかのように?
そう思ったらなんかもう、なんか──存在しているだけでエロいじゃねえか?
俺がおかしいのかコレ。
俺が不健全なのか。
「俺っち的に人妻はドエロい!火照った熱を鎮める為に部屋で一人遊びしてたって、そんなの人妻道の序の口よ。魔王様はエロ判定が低い!エロなんかもっとねっちょりなんだかんね?」
「くっ、お前の持ってた人妻巨乳のエロ本展開が、事実だって言うのかよ……!?」
「モチに決まってんよ〜っ城下の雑貨屋のマーリャも旦那のいない昼間に『貴方の剣で私を串刺しにして?』ってムチムチの尻と胸を俺っちに……!」
「ふあっ!そんなにエロい存在になってたなんて、お、俺でアイツの体を満足させてやれんのか?」
こうしちゃいられない。
俺は真っ赤な顔であせあせと立ち上がり、拳を握ってマルガンに向き直る。
マンネリやらレスやらで、だんだんと不満が溜まることはよくあるらしいからな。
恋愛コラム調べによると。
と言うわけで〝俺とは真逆だったアイツの好きなタイプになってメロメロにする作戦〟は一時中断。
それよりも断固早急にどうにかしないといけない事案が現れた。
「今から〝シャルの性癖を調べて今夜は満足させてみせるぜ作戦〟に変更だ……!」
「イエスボス!」
作戦名がそのまんま?
うるせえこちとら男として生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぞ!
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