127 / 615

第127話

それから暫く後。 パラパラとページをめくって、読者コメントの夜の生活を驚いたり感心したりしながら、それなりに楽しく犬と読書をした。 ちなみに俺のアレは、ピクリとも反応していない。 えっちな絵が全面的に載っているページは、犬がすかさず前足ガードをするからだ。 「おぉ、通販コーナーまである。サキュバス協力制作の魔女の媚薬……いや媚薬はもうあるようなものだからな……オークの精力剤……精力剤…」 ……欲しい、かもしれない。 いつも意識を失うか、起きていてもヘロヘロだから、俺は体力作りを頑張っている。 でももしかすると、こっちの衰えもあるのかもしれない。……いやいや、まだ大丈夫な筈だ。 異世界人は肉体が衰えないからな。大丈夫。 自分に言い聞かせつつ、俺は癒やしを求めて、隣でふすふすと雑誌をのぞき込んでいた犬に抱きつく。 「!」 「魔族の女性は積極的で扇情的だな……俺はアイツの好きなタイプもしたいプレイも知らないが、ちゃんと満足してくれているのだろうか」 うぅん、と悩ましい愚痴を犬に零すと、犬はわたわたと慌てて、グリグリ顔を押し付け励ましてくれた。 「ふふふ、ありがとう」 「アゥォ…!」 何故か懸命に頷く犬がかわいくて、にこにこと笑った。 よし、俺も何か積極的にやってみよう。 そもそも基本的に、されるがままの流され男なのがよろしくないな。 ここは密かにセックスの腕を磨いて、俺が押し倒すくらいじゃないと。何事も努力だ。 なでなでと犬の頭を撫でて、俺はさっきとは違う意気込みを新たに、参考書を読む気持ちでエロ本に向き直る。 「……ん?」 そして俺は通販コーナーでいいものを見つけ、これは、と目を輝かせた。 「見てくれ、こっそり練習するなら〝しっかり固定可能!潤滑油付き張型〟と〝魔力で振動?魔導バイブ〟のどっちがいいと思う?」 「グルルルッ!ウォンッ!グアオッ!」 ベシッポイっ 「!?なんで投げるんだ…!?」 これを使ってセックスの腕を磨こうと、通販コーナーのバイブとディルドを指差した俺。 だが突然手元からエロ本がなくなり、びっくりして目をパチパチさせた。 どっちの方が練習道具に良さそうか聞いただけなのに、牙をむき出して怒り出した犬が、素早い動きでエロ本に噛み付いて、ポイッと遠くに投げ捨てたのだ。 「あれじゃ練習にならないのか?もっとイボイボしたエグいやつの方がいいか?」 「ウウゥッガウッ!」 この世界まだプラスチックはないみたいで、素材が魔物の骨だったり木製や青銅、真鍮だから、あまり大きなのは怖いんだが…。 チョイスに不満があったのかと思ったのに、犬は怒りながらブンブン首を横に振る。 そしてなぜ場所を知っているのか、壁際の棚の上から紙とペンをくわえて戻ってきた。 犬はベタベタの紙をローテーブルに置いて、ペンをくわえ、不格好で読みにくいがちゃんとした文字を書く。 「〝浮気〟?」 「ガウ」 首を傾げて文字を読むと、そうだと言わんばかりに頷かれた。 「……無機物だぞ?」 「ウウゥ…!」 だめらしい。 俺はアゼルみたいな事を言い出す犬に、魔界共通なのかと浮気の定義を聞く事にした。 後でうっかりやらかし、アゼルが拗ねる可能性があるからな。俺は浮気なんて断固しないのに、仕方がない魔王様だ。

ともだちにシェアしよう!