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第128話
無機物に嫉妬するのはアゼルくらいだと思ったが、みんなそうなのかもしれないからな。
それに俺が思っているだけだが、この犬はアゼルの眷属なわけだ。きっとアゼル基準で教えてくれるはず。
じっとりと責めるように見つめる犬に、俺は腕を組んで真っ直ぐに向き直る。
「玩具を挿れて動きを練習しようと思うんだが、それはお前的に浮気なのか?」
「アウ」
「じゃあ口でする練習をするのはどうだろう。まだした事がない」
「!ウアウ!」
「絶対だめなのか…!?んん、無機物でもアゼル以外にそういう事をするのが、まずよくないと」
そのとおりと頷かれた。
本当に賢いな……そして主をよくわかっているみたいだ。
悩ましい顔をしていると、犬は俺をわからず屋と認識したのか、その大きなモフモフの身体を動かしのっしりと俺に乗りかかってくる。
「うぐ、なんだ、どうした」
ドサッ、とソファーに押し倒され、逃げられない。
じゃれつかれるのは構わないが、傍から見たら獣に美味しく頂かれる寸前の姿だ。物理的にである。
機嫌の悪い犬は、?を飛ばして押し倒される俺の口を、熱い肉厚の舌でぺろりと舐めた。
「んぶ、」
犬の愛情表現は口を舐める事らしいが、あまりに突然で驚く。しっとり滑らかだ。
更に混乱する事に、そのまま舌が口の中に入りこみ、まるでキスをするように口内を舐め始めた。
「んっ、う、やめ、うあ…」
うぐぐ、しかも上手いな…!
人間の舌とは違う大きな舌が口の中を擽るが、それが知ったように俺の弱い所をつつくので、ちょっと変な気分になりかける。
アゼルは舐めるのが好きなんだ。
それで口の中もそんなふうにされると、ゾクゾクするくらいには敏感にされている。
乱暴するわけに行かないのだが、どうにかやめさせようと犬の毛皮を押してみるが、犬の身体はびくともしない。そしてモフモフしていて触り心地がいい。
「はっ、っ…、今度はどうした、くっ」
ようやく舌が口の中から出ていって息を吐くが、次はそのまま首筋を舐められる。
更に下がってカーキのベストをはだけさせ、シャツの上から胸の突起を鼻先でグリグリいじられ、舐められた。
「っ、こら、そこはだめだっ」
流石に慌てて犬の頭をグッと強く押しのけるが、全く避けられない。つ、強いぞ。犬なのに凄く強い…!
カリ、
「んぁ…っ」
唾液で濡れた生地の上から、透けて立った突起に歯をたてられる。
弱点への刺激につい甘い声を上げてしまい、バッと口元を押さえた。
俺は犬相手になにをされているんだ。
そしてコイツはなんで俺のツボを心得ているんだ。やめろ。乳首を噛むのはやめろ。
「あ、も、ダメだから、っやめろ、あっ」
「わう…!」
「尻尾振ってる場合じゃ、ンッう、はぁ…っ」
ご機嫌だなくそう可愛い…!
はちきれんばかりに尻尾を振って、俺への怒りなんて忘れたのかそれはそれは楽しそうに俺の体の上に寝そべり、熱心に舐めたり噛んだりをする犬。
足の間にモフモフの身体をいれられてるので、足を閉じる事も起き上がる事もできない。
このままもし勃起したら、犬とはいえ即バレだ。
それはいただけない。無情すぎる。
俺は覚悟を決めて喘ぎ声を押さえつつ、もごもごと必死につぶやき、犬を軽くどかせる程度の魔力をこめて魔法を使った。
「ぁあ…っくっ、弾けっ!」
『打ち消せ』パァン!
「は?」
だがポカン、となにがなんだかわからない俺は、犬を見つめて固まる。
──お、俺の使った魔法が、何故か勝手に消えた…。
犬が一瞬声も発さず口を動かした気がするが、何も聞こえなかったし気のせいだろう。
そしてまったく気にせず、嬉々として俺の乳首をいじめている犬。
……ハッ!まさかこの犬、魔法無効のスキル持ちなのか…!?
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