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第113話
「そう言うユリスは男の方が好きなのか?」
万人受けする可愛らしいユリスだが、女性がどうのこうの言っている所を見た事がないので尋ねると、ユリスはしれっと返した。
「男とか女とかじゃなくて、お父さんくらい美しく兄さんくらい強ければどっちでもイケるね。魔王様が女性でもいいもん」
「リューオが女性な「誰がクリーチャーと恋に落ちるワケ殺すよ?」くりーちゃーか……」
友人の女体化が睨みつけるユリスにクリーチャー扱いされ、どぎまぎと黙る。これは聞かない限り俺の心に秘めておくぞ、安心してくれリューオ。
それは置いておいて、好きな性別などないというユリスの答えには素直にかっこいいと思った。基準が明確だ。
美形の犬耳イケオジなワドラーレベルで容姿端麗な、まだ見ぬお兄さん程強い存在なら恋愛対象になるらしい。
ふむ、相当絞られるな。
恋愛対象なんて言うテーマを得て更に女子(?)会は話が弾み、ベリージャムクッキーをお供に話題は好みのタイプに移った。
ユリスの好きなタイプは恋愛対象内の存在前提で、容赦がなくクールで危険な香りがするのにどこか優しい人だそうだ。
できれば黒髪細マッチョが理想。
冷たい見下した視線がたまらないと語られる。このまま進めば個人を特定できそうだぞ。
さり気なく金髪ワイルドイケメンはどうだろうと言ってみると、「人の知らない間に魔物退治に出て返り血を擦り付けてこない人にして」と冷たい見下した視線で棒読みされた。
「お前の好きなタイプ……と行きたいけどどうせ魔王様なんでしょ。わかってるよ」
ユリスのタイプを聞いて次は俺、となったみたいだが、答える前にはいはいといなされた。
間違いはないので否定はしなかったが、そんな話した事がないので改めて考えてみる。
好きなタイプか。
いや好きなアゼルのタイプだな。
完璧なアゼルを敢えて変えるとすればもう少しこう……顔面偏差値を落として頂いて、できればスタイルも健康を損なわない程度に崩して頂いて……具体的に言うならんんん…。
「身長が小さめで……あんまり眩しくない健全な面相で……やや三段腹ぐらいの適度に弛んだ身体で…」ドカッガタガタッ
「あぁ……なるほど。確かにそれなら(魅了系無自覚モテ率減るから)のほほんなお前的にも安心感あるね」ゴンッ
「後は個人的に獣耳が欲しい(自分に)のは置いておいて……俺の勝手な要望でいいなら、あまり(他の人に)優しくしすぎないで欲しいな」ピヨピヨ『あぁん!?何だよこのオモチャ!』
?なんだかどこかから声がした気がした。
キョロキョロと見回すが、音が止んだのでユリスと首を傾げる。
どこかの部隊が近くで訓練でもしているのかもしれない。
気にするのはやめて、そういえばもう一つちょっとした好みのタイプがあった事を思いだした。
好みのタイプと言うか、できればと言う感じなんだが。
「あれが……上手い人がいいな。俺は本当にいつもどう断ろうと悩んでいるんだが、アゼルは強引だから……ほら、下手くそだろう?」ドカァァァンッ!
「なっなに!?」
会話の途中で今度こそどこかでなにかが破壊されたような音がはっきりと聞こえ、俺達はぽかんと間抜けに口を開けて驚く。
「プ……プレゼント選びと、節約が……」
呆気にとられながら呟いた俺の言葉は、震源地に届く事はなかったのであった。
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