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第115話(sideアゼル)

すっかりオーバーキルされた俺のメンタルへ、無垢な言葉達で襲いかかった数々の事実。 対俺リーサルウェポンのシャルの初撃。 『いや、抱きたいけどな』 アイツ俺を抱きたいのか!? 全く懸念していなかった立ち位置逆転願望。 あのあの手この手で開発された熟れきった身体が抱く側だけで満足できるのか疑問だが、絶対そこまで考えてねぇ。 俺はシャルが求めるならこの身を捧げる覚悟だが、正直不可能に近い。アイツが俺にあれこれするんだろ?俺が押し倒すのを我慢できると思ってんのか?俺だぜ? しかもキスマークもつけられないくらい防御力の高い俺だ。 シャルの剣だこの名残がある骨張りつつもほっそりした指じゃ、俺の括約筋には勝てねぇぞ。多分。 そしてシャルの方が圧倒的に可愛い。 俺以外の奴らは全員「いや鈍感天然なだけで可愛い要素ねぇだろ」と言うが、あいつらは目が腐ってやがる。 いいか? 持病のシャル可愛いが発病したから真剣に聞きやがれよ有象無象共め。 シャルは食が細いので細身だが背も高いし筋肉もある程度あるし、面差しもキリッとした端正な顔立ちだ。 確かに昔魔界に来た初めは無表情だったし、どことなく投げやりでもあった。そう思うと可愛くねぇと思うのは無理もない。素人はよく踏む過ちだぜ。 しかし。 今でも素の顔は真顔気味で慣れない人はとっつきにくそうと思うかもしれないが、実際は冗談も言うしよく口元は笑っている。 懐に入れた人の事はとめどなく受け入れる包容力。 慰めたり褒める時に頭を撫でて可愛がる癖。 不安にならないよう気持ちは素直に告げ、好意は全面に押し出してくれる愛情深さ。 話を聞かずに否定したりは絶対しねぇんだ。否定されないんだぞ?それがどれ程サンシャイン属性なのかわかるだろ?最強だろ? ほら見ろ。どこからどう見ても可愛いじゃねぇか。 だから抱かれるべきはシャルだ。 ……並べ立てると俺より男前だとかはこの際無視しろよ。どんなに格好良くても俺には可愛く見えるかんな。 多少脱線したが、世界の常識シャルが可愛いを唱える事で初撃を耐えた俺。 が、放たれたシャルの好みのタイプでものの見事にメンタルはズタボロになった。 『身長が小さめで……あんまり眩しくない健全な面相で……やや三段腹ぐらいの適度にたるんだ身体で……』 ぐはっ……俺の方が背が高い…! 残念ながら魔王仕様で魅了アップの俺のご尊顔…! 努力も虚しく引き締まった腹筋に、軽やかに動けるよう身体を重くしない程度に鍛えた身体…! 『確かにそれならのほほんなお前的にも安心感あるね』 あっ安心感だと…!? シャルの好みのタイプじゃねぇ俺に安心感がなかったのか!? 『後は個人的に獣耳が欲しいのは置いておいて……俺の勝手な要望でいいなら、あまり(シャルに)優しくし過ぎないで欲しいな』 !獣耳はあるぜ!あるんだぜシャル!だが……優しくするなってどういう事だ…!?厳しい男が好きなのか!? どんどん知られざる妃の好みのタイプが割れて行き、俺はハラハラと動揺で廊下を荒らしながら聞き耳を立てていた。 ヒットポイントは赤ゲージ。 だがよろよろと肉体改造計画を練る俺にとどめを刺した一撃。 『あれが……上手い人がいいな。俺は本当にいつもどう断ろうかと悩んでいるんだが、アゼルは強引だから…』 『──ほら、下手くそだろう?』 「下手くそ……この俺の……実は百年越えの童貞を拗らせていた事が……バレていたとでも言うのか…」 「魔王様〜帰っておいで〜!せっかくのイケメンが台無しだよ〜?」 ガーンと落ち込み度が地底に達している俺の話を聞いて、軽い語調の軟派な男がゆさゆさとソファーに突っ伏す俺の身体をゆさぶる。 へらっと緩い笑みを常に浮かべ、肩にかかるくらいの柔らかい金髪、誘うように緩い瞬きをするタレ目の甘いマスク。 黒い軍服に身を包んだ息をするように誰でも口説く、魔界きってのチャラ男でサボリ魔。 俺の桃色事情系知識の大元。 マルガンこと、陸軍長マルゴリー・マルゲリーテだ。 残念ながら今の俺には、のぞき込んでくる女受けバツグンの顔も土偶に見える。 下手くそと言われた男の気持ちがチャラ男にわかるかこの野郎。

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