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第116話(sideアゼル)

ちなみに俺が逃げ込んだこの部屋はマルガンの私室だったりする。全体的に目がチカチカするし趣味が悪い。 つか、こいつは仕事してねぇけどなにしてんだ。 俺はある程度片付けてからの立派な休憩時間だが、アホは当然のように自室にいたぞ。 書類仕事を全てゼオに押し付けているマルガンの仕事は訓練、巡視隊を率いて見回り、軍事演習、放っておけばアホほど増える魔物(魔族じゃねえぜ)の討伐等。 どれもこれも私室に引き篭れそうにない仕事な訳で……またサボりか。 お察しの現状をジト目で見ると、マルガンは視線に気がついてギクッと目を逸らした。 そしてアハハと笑いながらまあまあと俺の肩を叩く。 「お、俺っちのことは置いといてねっ?話はわかったから、魔王様はお妃ちゃんの好みに近付けてバッチリハートをゲットだぜ!今もマジラブされてると思うけど、も〜っと好かれて困る事はないわけだしぃ?恋愛マスターマルちゃんこと俺っちが協力するよ〜!」 ガバッ 「お前はバッチリ仕事中だぜ」 「話がわかる男がボスで俺っちは幸せ者さ」 ──この瞬間、〝俺の全ては嫁基準・溺愛の国のポンコツ魔王アゼリディアス〟と〝仕事とアタシ?いいえ下半身です・スケコマシ長官マルゴリー〟の、脳内桃色コンビが結成されたのであった。 仕事? ンなもん追いつかなけりゃ後で徹夜キメるぜ余裕だぞ舐めんなよ。 ♢ ──半時間後。 何十年とこの容姿である俺はいくら食べてもつかない駄肉に見切りをつけ、マルガンの提案で服の中に布を詰め込んだ姿で鏡の前に仁王立ちしていた。 以前、シャルの好きな動物と爬虫類を両立する為に獣耳とドラゴン尻尾を求めていた時あみだした、獣耳形態にも既にチェンジ済みだ。 頭の上にはぴょんと立った狼の耳。 人型の耳がなくなったので獣耳の方に俺のピアスが移動している。そういうもんだ。 尻尾を出す穴を下衣に開けるとスースーして気持ち悪いと学んだ俺は、衣服のつなぎ目から外に尻尾を出している。 鏡の中に映るのは、獣耳獣尻尾装備で腹部にこんもりとちょっとした膨らみをもつ俺。 尻尾がパタパタと嬉しげに揺れるのを止められない。誇らしくフフンと笑ってみせる。 「フッ、パーフェクトだマルガン」 「にっひひ〜良案っしょ?これぞ見事なオーク腹!お妃ちゃんメロメロ間違いなし!」 「バッカよせよ気が早ぇだろっ」 ドヤ顔を晒す俺にマルガンはパチパチヒューヒューと野次を飛ばした。これでシャルもメロメロか、クックック…! 情報では、シャルはもう自分の部屋……俺との部屋に帰ったみてぇだから、このまま凸れば「今日のアゼル、すごくイイな」的な感じになるのでは。 いやなる。なるに決まってる。 「よし行くぜマルガン、お前には俺の勇姿を見届ける栄誉を与えてやる」 「ガッテン承知ちゃん!俺っちアイでバッチリ見届けるよ〜!」 パッタパッタと尻尾をフリフリする俺と好奇心と出歯亀と公然のサボりでウキウキのマルガンは、意気揚々と部屋を出て駆け出した。 勿論誰もとめるものはいない。 魔王と陸軍長官だからな。 待ってろシャル! お前好みにパワーアップした俺がお前をもっとメロメロにしに行くぜ!

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