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第120話

ワンコ状態のアゼルが可愛かったので、俺はレシピ書と書類を片付けてから、上機嫌にアゼルの執務室までやってきた。 終わった書類をライゼンさんに届ける為だ。 魔王の執務室の隣にライゼンさんの執務室があるのだが、アゼルの補佐をしているライゼンさんは大体こっちにいるので俺は自然とこっちに来てしまう。 今日の俺の書類仕事は、定型文の書類をよりわかりやすく簡単に改変するだけ。 最近始めた仕事だな。 アゼルやライゼンさん達は毎日の仕事と新しい案件を処理しているので、古いものの改訂は微力ながらお手伝いしているのだ。 変えられそうな所にペンを入れたので確認してもらい、大丈夫なら担当部署の従魔と手分けして新しく作る。その時はまた俺もバイトをするぞ。 書類を渡すとライゼンさんは確認する間お茶を出してくれて、俺は魔界のノーマルなお茶菓子であるドライフルーツのようなきのみのお菓子を摘む。 いつもなら事務仕事中のアゼルが休憩時間だろうがそうじゃなかろうが関係なくいそいそと隣に座って、当然のようにティータイムを始めるのだが……今日は姿が見えない。 さっきは素直に帰って行ったんだがな。 どこかに会合かなにかしに行っているのかもしれない。突然他国の侵略者がやってくる事もあるしな。 「──うん、よさそうです。それじゃあコレを明日の朝礼で各所のトップに回して、問題なければ改訂した書類の原本を作成しましょうね。いつもありがとうございます」 一人ティータイムを楽しんでいると、確認を終えたライゼンさんはにこやかに微笑んだ。 よかった。問題なさそうだ。   「それは良かった。ところでアゼルは戻ってきていないのか?」 「あれ?そちらにお邪魔してませんでしたか?魔王様は休憩を取ってお菓子を楽しんだ後、シャルさんに会いに行くと出ていったきりまだ戻らないのです」 「なるほど、確かに会いに来たぞ」 そして可愛かった。 キョトンとしたライゼンさんに先程起こった、俺としては満足だが目的はよくわからない遊びをしていたアゼルの事を話して頷く。 「えぇ…!?……いや……そうですね、まだ戻らないのはそういう……ふむ……」 するとライゼンさんは「あの子ったらまた…!」とでも言い出しそうな表情で頭を抱えてしまった。ど、どうした? 心配になって眉を垂らすと、すぐに微笑みが返ってくる。 「ふぅ……大丈夫ですよシャルさん。この未帰還は恐らく問題があって戻らないのではなく、魔王様が問題みたいな事案ですので」 「?また発作か?」 「そうですね、体質です。満足するまで暴走したらそのうち落ち着くと思いますよ」 そういう彼の顔には、うちの子がすみません、と書いてあった。遊びではなくいつもの発作だったみたいだな。 大丈夫だぞ。 アゼルが俺に変な行動を取るのには慣れている。 この間俺の破れてしまった靴下を手に入れる為に、流石の俺も気付く程捨てようとするのをあの手この手で止めてきたからな。 事前にコレクションしている事を知っていたから気付いたというのもあるが、あからさまだった。 俺としては毎回洗濯しているとはいえクタクタの生地になった穴あき靴下をあげるのはつまらないものですが感があったのだが…。 あんまり必死に陽動してくるので、つい絆されて「じゃあアゼルが捨てておいてくれないか?」と渡してしまったんだ。 うぅん、こう言う時も知らんぷりするのは大変だな。 普通に新品を渡してあげたいんだがそれもできない。 それにもし感づかれてもう一度聞かれたら、絶対に言ってしまう。もうライゼンさんのフォローもないのだ。絶対言ってしまう。

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