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第122話

漸く地に足ついたので、なにかしらプラスアルファして俺にお披露目してくるアゼルに、改めて向き直る。 「シャル、どうだ?俺に何か言うことがねえか?」 すると再び先程と同じことを言われた。 言うこと? どうやらなにか言わせたいみたいだが、思い当たるフシがなくてキョトンとしてしまった。 言うこと、言うこと、……あ、そういえば。 悩ましくアゼルを見つめながらしばらく考えた後。 ややあって、俺は言いそびれていたことを思い出す。 「さっき言い忘れたが、耳と尻尾が似合っている。とても可愛い」 「か、かわいい……ハッ!?」 褒めたつもりで求められているだろうセリフを言う。褒められ待ちだったんだろう。たまにある。 けれどアゼルはガーン、と衝撃的な顔をした。 むむ、思っていたことと違ったのか。 他にはなにか……と考え直そうとすると、アゼルは俺の両肩をガシッと掴み、真剣な表情でゴクリと唾を飲む。 「お前、やっぱ俺にしたいのか……?」 「?したい?なにをだ?」 「俺がお前にすることだ」 アゼルがすること。 ……腹にバスタオルを詰めたり、仮面をかぶったりする謎の遊びのことか? 考えが追いつき、俺はすぐに首を横に振った。 アゼルがしたいなら勿論付き合うが、好きでやるかというとちょっと遊びとしては面白さがわからない。申し訳なくて肩をすくめる。 「いや、実のところ俺の趣味とは合わないからしたくはないな。もうちょっとこう……(遊ぶなら)外でとか……」 「外で……!?」 「ん……でもまあ俺も大人だから、外は見られたら恥ずかしいかな」 「そっ、そうだな、うん。俺は有りだけど、お前が見られるのはだめだ、うん」 遊びの話を聞きつつ、少し赤くなりながら神妙な顔をして頷くアゼル。 そうなんだ。流石にいい年した大人の男がキャッキャと外ではしゃぐのはちょっと照れくさい。大人数なら構わないんだがな。 「何人かですれば「却下」?だめか?」 「当たり前だろアホシャル!いくらお前の頼みでもそれは聞けねぇぞ……?」 「そんなに嫌か?んんと、それじゃあ室内で二人でするなら……なんだろう。一人遊びは得意なんだが、二人はすぐに思いつかないな」 「ひっ……!?ひとりあそびがとくい……!?」 話を続けると、俺の何気ない言葉を聞いたアゼルが、突然カッと真っ赤に染まる。 ええ、と、どうしてそんな羞恥顔になるんだろう。 ……魔界ではもしかして、一人で遊ぶのは恥ずかしいことなのか……? ハッとして口元を覆う。 魔境生まれのはずのアゼルが驚いているから、遊ぶと言えば魔物でも動物でも他と一緒に遊ぶのが普通なのかもしれない。 そんな馬鹿な!と驚くがでないと辻褄があわないんだ。 そうじゃないとこの反応は可笑しい。恐らくアタリじゃないだろうか。 魔界ルールを知らなかった俺は、恥ずかしくて少し赤くなってしまった。 捕虜時代は基本一人だったからなにかと一人で過ごすのがうまくなっていたのだが、まさかそんなよろしくないことだったなんて。 「ちょ、ちょっと恥ずかしいことを言ったみたいだ、忘れてくれ。俺は部屋に帰る」 なんとなく居づらくて、俺は言うだけ言って足早に執務室を後にした。 ──ちなみにライゼンさんはずっと石化していたので、アゼルが心にしまっておいてくれれば俺の沽券は守られるはずだ。 くっ、魔界の常識は難しいし、法律等常識は日々変化しているんだった……!

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