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第151話

氷の入れられた木箱の上に並ぶ鮮魚。 人形サイズの大きなペンギンが店主のようで、ぺちぺちと手を叩いて客を呼んでいる。 その中にしれっとまざっているあの艷やかな巨体。 俺は勇み足で魚屋に向かって歩いて行き、ペンギン店主に声をかけた。 「この空マグロをひとつ」 「まいど!どうぞペン!」 ──ガド、俺は空マグロを手に入れたぞ。 語尾がペンのペンギン店主から空マグロ……見た目は完全にマグロなのに、味がチョコレートというびっくりドッキリ食材を購入し、ホクホクと召喚魔法でしまった。 このマグロは空を飛ぶのだが、空軍のガドは巡視中捕まえてつまみ食いしているらしい。 それを聞いてから気になっていたのだが……まさかこんなところでお目にかかれるとは。 割とマニアックな食材なのか、一メートルより少し小さいくらいのサイズで、お値段は一匹金貨二枚だった。良心的だ。 隣でリューオがマグロ一匹買いに怪訝な顔をするが、気になっていた食材を手に入れて大満足な俺である。 「リューオ、空マグロはマグロなのにチョコレート味なんだ。凄いだろう?」 「意味わかんねぇ。マグロじゃねぇのかよ!」 「マグロなのにだ。好奇心の購入だが、俺はこれずっと気になってて……明日のおやつにしような。お裾分けするぞ」 「ゲッ!……いや、ちょっと貰う……」 リューオは一瞬気持ち悪そうにうげぇと引いたが、好奇心があるのか結局は頷いた。 うん、あの元々のマグロを知る人ならば、気になる魅惑のゲテモノだろうとも。 「おっミノタウロスの串焼きだ。美味いんだよなァ〜アレ食おうぜ!食い道楽も街歩きの面白さだろ?」 「ん、そうだな」 そうして欲しかったものとの巡り合いを終えると、食材の屋台ゾーンを抜けたのか、調理済みの食べ物が売られた屋台ゾーンに入った。 リューオに手を引かれた俺は、串焼きを二本買って分け合い、食べ歩きを始める。 ふむふむ、味は歯応えのある牛肉だな。 売っているのは、まさかのミノタウロス魔族だった。いいのか……? 遠慮が皆無のリューオが店主に「牛が牛売ってるのってどうなんだ?」と?を飛ばして尋ねると、「ミノタウロスに牛ネタ古いわ〜」と笑い飛ばされた。 うぅん……魔族と魔物は、気持ち的に人間と猿なんだろうな。似て非なるものなんだろう。 サイドの屋台ゾーン。 逆側の食べ物と小物や布、アクセサリーの雑貨ゾーン。 街に入ってすぐのあたりから広がる屋台市は、見どころ盛りだくさんだ。 商品も屋台も日々変動することが多いから、はじめはここを眺めて歩くデートでもいいかもしれない。 「マンドラゴラ……!すごい顔だ。あれ見に行こう」 「アァ?ヤダよそれよりウィンドバードの唐揚げドッグくおうぜ!」 「ぐっ、三十路の胃にジャンク連投はキツイ……!」 「身体劣化しねぇだろまだまだ若いって!なぁイイだろォ〜?」 「んん、隣の果実水をつけてくれ」 「ヨッシャ!余ったら食ってやるから大丈夫だ。買ってからマンドラゴラな〜!」 ご機嫌のリューオと仲良く今度は唐揚げドッグの屋台へ向かう。若さすごい。 手は繋ぎっぱなしだが、人混みではぐれないために都合がいいので、お互い全く気にしていなかった。

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