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第152話(sideアゼル)

街中をコソコソと人の足の間を縫って歩き、道中と同じく密やかな護衛を続ける俺。 道行く魔族達は誰かに飼われたダークウルフかなんかだと思って、あまり気に留めていない。 それをいいことに俺は、興味津々で市場を眺めているシャル達を忍びつつ見守る。 思っていたより栄えていると感心しているようだ。 「スゲェ、人間国に負けねぇぐらい賑わってんなー」 「そうだな。建物の構造や品揃えはやや違うが、人間国より騒がしいくらいだ。城下町は他の街より活気があるな……」 「俺魔界にくるまで魔族なんてあんま見なかったし、見てもすぐ討伐してたから、昔は魔物みてえな奴らだと思ってたんだよ」 まぁ、そうだろう。 人間ってのは魔族悪説が普通になっていて、絵本まで作って洗脳してるような種族だからな。 そういう意味で、異世界から来たシャル達は割とすんなり魔界に馴染んだ。 教えられただけで、憎いわけじゃないからだ。 それに見た目が変わらず人間より長く生きる異世界人たちは、人間より魔族に近い。 それを知る王や貴族は人ならざるものとして嫌悪する場合もあったらしい。 ……思い出したらムカついてきたぜ。 ちょっと弱ってた時に教えてくれた、シャルの人間国での仕事。 従わなければ居場所はないと言われ、裏方の汚れ仕事を押し付けられていた生活。 ぐっ、クッソもっともっと丁寧に拷問にかけて殺せばよかった人間の王ッ! あの時の俺、知らなかったとは言え生温いぜ!絶許……ッ! 「ヒッ……!」 「うわ……っ!?」 おっと。うっかり思い出しイラしてしまった俺が威圧感を出してしまい、周りの魔族が遠巻きに距離を取り無人サークルができてしまった。 やべぇ、さり気なく見守る計画が。 内心で慌てつつも俺は冷静を装い、しれっとした表情を意識してその場から逃げ出した。 そしてしばらく後。 俺は──魚屋の空マグロを買い占めていた。 『これ全部』 「ペン?買い物をするなんて賢いウルフだペン〜。主人にお金は貰っているペン?」 『問題ねぇぜ』 「ペッペン!?」 ペンギン店主にジャラジャラと金貨を一山渡すと、驚いて飛び上がる。 必要な分を差し引き、在庫を全部売ってくれた。 フッ魔物じゃなくて魔族の形態変化なんだが、それを言うとややこしいかんな。 策士な俺は、シャルがあんなにキラキラウキウキしていた空マグロをたっぷりゲットして、素知らぬ顔でプレゼントする魂胆である。 正直俺は食ったことねぇけど……シャルが気になってるって言ってたんだ。買わない手はねぇぜ! プレゼントを手に入れてホクホク顔の俺は、匂いを辿って追いかけた先で、ぽかんと目を見開く。 そして何故かクソ勇者に手を引かれ、じゃれながらミノタウロスの串焼きを食べるシャルに、バターンッと卒倒した。 近いッ!距離がッ!

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