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第181話※

暖かな湯船で赤く染まった熱い頬に押し当てた唇を、薄く開いて肌を食む。 「ん」 擽ったそうに片目を閉じたが、アゼルは好きなようにさせてくれた。 そのうちに中をゆっくりと丁寧に解いていた指が、グゥと突き入れたまま広げる。 指はイタズラにお湯を招き入れ、ズルリと出ていった。 腰を抱かれ膝立ちになると、肋の凹凸をベロリと舐められ力が抜けてしまう。 「ぅあ……っ」 「気持ちいいのが好きなんだろ?」 肌が粟立つ感覚を収める前に、代わりにあてがわれた怒張が、急いた様子で先端を潜り込ませた。 きゅう、と期待に収縮する口がくびれを締め付ける。 それを咎めるように、胸元に吸い付いた唇が鬱血痕をつけてしまう。 舐められ、噛まれ、吸われ。 ビクンッと背を撓らせて仰け反った途端引き寄せられ、一息に根本まで突き刺ささった。 「ふ、あぁ……っ!ア、っそう、好き、ん……ッ」 「っつ、締めすぎ、だろ、馬鹿、っ」 「あっ、ンッ、ぁっ、あっ」 俺の体を掴んで軽々と揺さぶるアゼルに、されるがままの俺は(かぶり)を振って乱れるしかない。 胎内にピタリと馴染む杭が穿つたび、凹凸が壁をひっかき弱いところをゴリッと抉る。 コレの形をもうすっかり覚えている。 どこがどう擦れて気持ちいいのか、目を閉じていても反芻できるほどだ。 あぁ、好きだ。 隅々まで満たされる。 熱くなって随分馬鹿げた遊びをしたが、欲しかったものが与えられて全身で歓喜してしまう。 「お前が、お前だから、っ、あ、いい……っ好きだ、アゼル、が、一番……っ」 「うっ、!くそ、俺だって、っ」 頭がだめになってしまい切る前に言いたくて、懸命に愛を告げた。 それに応えるようにアゼルが動き、激しく突き崩される。 チャプチャプと揺れるお湯の音を聞きながら、理性の飛んだ俺はイイ、もっと、とすっかり夢中で快感に浸った。 その後は──もう。 俺が堪えきれずに達してもアゼルは休息を許さず責め立て、穿ち、何度も奥に注ぎ込む。 我慢していたのは俺だけじゃない。 意地悪をしてみせたのは他にフラフラと懐かせないため。 黙りこくって理性と戦っていたのは、誘えばいつもどうにかなるなんて思わせないため。 グズグズに蕩けた体をまだ足りないと犯されながら、今回は俺の完敗だな、とふやけた思考で実感して笑う。 俺は男が恋愛対象ではない。 だがアゼルは他の人と二人きりで出掛けられるのが、本当は嬉しくなかったのだろう。 ちゃんと許可を取ったとはいえ、その感情を譲ってくれたのだ。 いつも恋心は鈍くて見抜けず、不安にさせてしまったことを反省する。 『あいしてる、いちばん、おまえだけ』 俺は噛み付いてくる頭を抱きながら、たっぷりとそんな愛の言葉を、喘ぎ混じりに吐き出した。 自分が抱いている俺の様子を見れば、触れられただけでこんなに可笑しくなるほど熱くなっているのが、一目瞭然だろうに。 まったく。独占欲が強くて嫉妬深いアゼルは、自分ばかり愛していると思っているが……そこのところは鈍いな。 誰とデートがしたくて出かけたのか。 それを忘れているらしいアゼルがやっぱり鈍ちんだ。 だがそれでもアゼルが愛しくてたまらない自分に、一番呆れて笑ってしまった。

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