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第182話

♢ またもや逆上せた。 それはもう当たり前に逆上せた。 今回は前回と違い俺の理性も散り散りだったのがより悪い。 お互い煽りあっていたのもあって、気をつけようと思っていたのに、まんまと同じ轍を踏んでしまったのだ。 グデグデの俺が好き好き言って悶えるものだから、アゼルも拗ねるのをやめてまた上機嫌になってしまってな。 逆上せた俺を洗い直してくれたのだが、沸騰しすぎて流れた鼻血を舐められた。 それのせいでおかわりを要求されたので、なんなら前回より悲惨である。 二人でそうやってじゃれあうようなセックスに溺れていたために、すっかり夜も更けてしまった。 果実水で回復しつつも、未だに血の気が抜け切らないような気がしてベッドに沈む俺。 アゼルはそれを横になり、肘を立てつつ眺めている。 ついさっきまで脱衣所で体力的に死んだ俺に、我に返ってからやり過ぎたと焦り倒していたくせに。 さっぱり忘れて、今はムフムフと元通り機嫌がいい。 たっぷりイチャついたので現金な旦那さんだ。 俺は着替えも歯磨きも乾燥の魔法も、全部甲斐甲斐しく世話をしてもらえて楽ではあったが、流石に鼻血を舐められるのは恥ずかしかった。 脱衣所から横抱きで部屋に運び出される時、今度はベッドになにもいないかと二人して一瞬気を張ったのも、少し面白かったな。 明かりの魔法はまだつけたままなので、部屋はオレンジ色の優しい光に照らされている。 目の前のニヤつく顔がよく見えて、俺はその頬をツンとつついて癒やしを補給した。 「結局俺の惨敗で散々焦らされて鳴かされて、ポジション敗退からお嫁さんにもなった訳だが……満足か?愛しの魔王様?」 「んっんむ……フフン、予定通りだぜ。煽り耐性ゼロだとかなんとか言う失態も犯さなかったしな。いいか?ポンコツだとか変態だとかチョロいとか言うけどな、俺は本来大人の余裕ある男だ」 「そうだな、大人の余裕あるな。ちなみにチョロいだとかは誰が言ったんだ?」 「クソバカ勇者」 リューオか。 フンッと遺憾そうなアゼルがなんとも言えないので、俺は頬をツンツンしてからよしよしとと慰めた。 グルグル喉を鳴らすのがその所以なのだろうな……。 アゼルは煽り耐性ゼロの汚名を濯いだとドヤ顔だが、それはそれで寂しい。 砂粒ほどの色気はあると思っていたが、ハウスダストくらいしかなかったみたいだ。 「煽り耐性を鍛えたんだな。……ん?髪を洗ってから湯船の中に潜って隠れたのは、なんでなんだ?」 「あぁ?」 そういえばと尋ねると、ムッとされて俺はなでていた手を離した。 離したが、無言で頭を擦り付けられたのでもう一度なで始める。 「お前、膝にうつ伏せで頭押し付けて隠した気になってたけどな、モロバレだったからな?爪でひっかいて我慢しようとしてるのも、結局角こすられてイッたのもモロバレだからな?」 「なっ、なん……だと……っ」 「そりゃ逃げるだろ。無意識に引っ張ったぐらいにはギリギリだったんだよこちとら。隣に入ってくんな足触んな。襲うぞ」 「あぁ……ええと……そうか……うん、よかった」 「よかねぇよ!」 喉元まで「やっぱり煽り耐性ゼロじゃないか?」という言葉がでかかっていたが、粗相がバレていたのが衝撃だったのとアゼルがグルルルと唸るので、ゴクンと飲み下した。 大人だからな。

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