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第185話

ガドは何度言ってもほとんどいつも窓から突然現れる、窓侵入者だ。 どこであろうがなでられたくなればそう強請り、スキンシップだと笑いながら遠心力をかけてくる。 ガドはアゼルを大事にしているのは知っていた。 大事な命の恩人の、大事な人ということで、懐いてくれているのだろうな。自惚れでもなくわかる。 ガドは俺を大事な友達だと言ってくれたから。 まぁちょっと友達にしては、過保護とボディタッチが過ぎるが。 アゼルが弟のように思うなら、ガドはアゼルを兄のように、家族のように思っているのだろう。 ふとガドとの出会いを思い出して、口元を緩ませた。 なるほど、あれはそういう意味なのか。 「アゼルはガドに愛されているな」 「おい待て、今の話のどこでそう思ったんだよ」 ムッとしてわけがわからないと言いたげな表情をするアゼルに、俺の笑いが増した。 悪意に敏感なくせに、好意には鈍いな。 そういうところも好きだが、もっと愛されている自信を持てばいいのにな。 「ふふふ、お前は自分への好意に鈍すぎる。いや、怖がりすぎるのかもだ」 「なっ、あぁっ?フン、それで言うならお前は、自分への悪意に鈍すぎるぜ。怒りってもんを知らねぇのか」 「ん、ん?俺はよく怒る……じゃなくて、馬鹿にしているわけじゃないぞ。ガドがお前のことを愛しているんだなと、思い出した」 「ハッ?」 鋭い目が丸くなり、キョトンとした。 今度は俺が悪戯めいた微笑みを浮かべ、出会ったあの日の見解を語る。 まだ魔界に来て二週間だった頃だな。 アゼルがどこかへ出かけた隙を見て、ガドは俺の部屋にやってきた。 魔王がとらえた美味しい異世界人を見に来たんだと言ってな? 俺がどんなやつか確認しに来たんだろう。 お前を害するやつだと困るからだ。 触られまくってジロジロ見られて、あの時は変な竜人だと思ったが……今の話を聞くと警戒していたようだな。 その理由を考えると、やはりそれはアゼルが大事ってことじゃないか。かわいらしい家族愛である。 「気づいてみるといじらしいだろう?お前にバレないように、機を見ていたんだ」 「……………」 「?どうした?」 にこにこと昔話をした俺に対して、アゼルは目を瞑って眉間にシワを寄せる。 更に非常に険しいへの字口で悩んでいた。どうした。 「………………うん。別にあの時は、こうじゃなかったから、許す」 「どういう脳内会議をしたのかわからないが、許すって顔じゃないぞ」 絞り出すように発した言葉と顔が一致していない。 微妙に照れているのもまたミスマッチだ。 「まぁ、アイツはあぁ見えて心配性だからな」 ふぅ、と息を吐いたアゼルは、俺をしっかりと抱きしめなおしてぬくもりを確かめた。 今日は色々あったからな。 後半は色々あったのは俺オンリーだが。

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