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第198話(sideリューオ)
俺は思ったことを口にすることに、躊躇はない。
めんどくせェし、相手もそうしてくれればいいと思う。
元々ノリが軽いので、それで問題はなかった。相手は嫌なら嫌って言えばいいし。
勿論言いたくても言えないって、難儀な性分のやつらもいる。それは知ってるぜ。
でも、ユリスはそんなタイプじゃないと思う。
普段からズケズケと俺に物を言うユリスを思ってそう言うと、魔王は首を横に振って、俺のデコに強烈なデコピンをした。
バチィンッ!
「だッッ!?!?」
「手加減したぞ」
「〜〜〜〜〜ッ!あのさ、たまに忘れてやがるけどよォ、俺人間なんだわ……」
魔族感覚でやると思っていたより威力があったのか、すごい音がして首がのけぞった。
マジでコイツ、シャル以外への気遣いが雑だな。
俺が鍛えて勇者スペックじゃなければ、どうなってたんだオイ。
「よく聞けよ馬鹿勇者。好きになったからって、そう簡単に気持ちを言えるもんじゃねぇんだよ。ましてや嫉妬したとか独占欲感じたとか、まず自分の中で整理するのに必死なわけ。人の気持ちは見えねぇから、その先の拒絶が怖いんだよ。わかるか」
「まぁ、わかる。けど俺はいつも好きだっつってんだろ?ビビることねぇよ。……俺はあぁやって笑顔で気持ち隠される方が、嫌だ。いつもみたいに怒鳴って怒ってほしい」
「言葉だけが真実かどうかなんてわからねぇよ。それにお前のことをよく知らないっての、気にしてるらしいしな。なにも知らねぇんだな、って気付いて悶々としてる時に他の女といるとこみて、それが嫌な自分に気付いて。そしたら力任せにキレちまうのが嫌で、会いたくないに決まってるぜ」
流石なのか、自分が素直じゃない自覚のある魔王の言葉は説得力があるし、珍しく的を得ていた。
それじゃあユリスは俺に八つ当たりをしたくないから、追い出したって言うのか?
自分でもどうしたいのかわかんねぇなんて、行動派のユリスらしくない。
……だけど、アイツが俺のことをよく知らなくて怖くなるってんなら、俺の方がアイツのことをよく知らないのかもしんねぇ。
言ってる言葉だけが本当じゃない。
そういう奴だってわかってたのに、それはつもりだったのか。
「ユリスは本人がそうしようと思ってなくてもツンケンしてしまうんだぜ?本当の言葉をありのままは言えねぇんだよ。なら、相手も本当の言葉を言ってないんじゃって疑ってしまうに決まってんだ」
「それって俺が信用ならねぇってことか?なら魔王はどうしてシャルのことを信じてんだ?その理屈だとアイツの愛してるを疑うんだろ?」
「面倒くさい男だなお前」
「普段散々ノロケ聞いてやってんだから生きるか死ぬかの時ぐらい長話させろや」
さっと手を上げられたので、デコピンされる前にデコを隠す。
こちとらいつも戦いながら愚痴愚痴言うのを、死にかけつつ聞いてやってるんだ。
ソファーで話くらい聞けコノヤロー。
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