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第197話(sideリューオ)✽
どうにかシャルを好きじゃない自分に置き換えて考える魔王は、苦々しい顔で心底嫌そうに口を開く。
「……俺は好きじゃない男が他の誰となにをしてようが、どうでもいい。怒らねぇよ」
「だから怒ったんだってよ」
「筋肉に頭まで蝕まれたのかお前。怒ったんなら、好きだろうが。よしんば愛の好きじゃなくても、誰かに触られるのが気に食わないくらいには大事だろ」
「…………?」
「…………お前自分にデレがくるとは思いもしないくらい、ツンに慣れ過ぎじゃねぇか?」
なに言ってんだ?と言うように首を傾げてキョトンとすると、魔王は眉間にシワを寄せて可哀想な生き物を見るような目をした。
やめろムカつく。
自分の嫁がデレマックスだからって余裕かましやがって。
や、だって俺は今まで出会い頭や隙あらばと告げた愛の言葉全部、返事がしょっぱかったんだぜ?
好きだぜの返しが『だからなに?』。
最高に愛してるの返しが『ふーん』。
今日も可愛いの返しなんて、『当たり前のことをドヤ顔で言われてもなんとも思わないよ。インキュバスの子供に口説き文句の稽古でもしてもらった方がいいんじゃない?』。
「これツンデレ語で解読してくれよ」
「あ?〝もっと具体的に言え〟〝知ってる〟〝可愛い以外に褒めるところあるだろ〟」
「初対面の魔物とトークショーするより無理あるわぁぁぁあッッ!!」
「なに言ってんだ。魔族は魔物語聞こえるんだから、魔物と会話できるだろうが」
「例えだよ察しろよ会話下手かッ!?」
後魔物語とか初耳だわ!
魔物って喋るのかよ!
ツッコミ廃業っつってんだろ叫ばすなや死ぬだろ気力尽きて!
スパコンッとソファーの肘掛けを叩く。イライラするぜ。
だってそういうことなら、ユリスは実のところ、俺を少なからず独占欲が湧くくらいには、良く思っていたってことだろ?
俺の日々の口説きは、効果があったってことだ。
……ん?じゃあなんで追い出されたんだ俺。
普通は誤解も解けてそうだったんだ!って安心して、「怒ってごめんね、実は嫉妬してたんだ。ホントは僕お前のコト……」みたいな流れになるんじゃねえのか?
「魔王、ユリスはどうして誤解を解いたのに怒ったままだったんだよ」
「お前は素直になれないやつの気持ちがわからなさすぎる。そうやってデリカシーがなくて物言いがキツくて、自分がハッキリした性格だからって、相手にもハッキリした答えを求めんな」
「ギャフン」
俺は人生で初めて、テンプレ的なギャフンと言ってしまった。
魔王をほんのちょっとでもまともに尊敬したのは初めてかもしんねぇぞ。
いや前にもしたかも知んない。
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