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第203話
恋する男のお悩み相談室と化しているユリスの部屋。
俺はユリスの頭の犬耳をよしよしとなでたが、弱ったメンタルが復活している彼は素早くペシッと手を払った。
なるほど、このギャップがつい構ってしまうのか。
俺はなでられて、手を振り払うことなんでできないが……。おとなしくそれを甘受することはできるんだがな。
それを紅茶を飲みつつユリスに言うと、ツンとそっぽをむかれた。
「どうせ僕はツンケンしてるよ!ふん、なにさ!僕にはできないって思ってるわけ?この僕を舐めないでよね!」
「悪かった、舐めてない。ええと、それじゃあちょっと練習してみるか?」
ポスン、なでなで
「ちょっとやめてペット扱いなんてゴメンだから」バシッ
「……確認なんだが、俺によしよしされるのは本当に気持ちの悪いのか……?」
「そっそんなこと言ってないでしょっ!?」
甘やかしを甘受する練習にと思ったのに、またしてもツンと素早く叩き落とされた。
なので流石に本気なのか確認を取ると、ユリスはアセアセとへの字口のまま否定してくれる。
良かった……!
アゼルはツンデレだが、嫌だといいつつも振り払うことはないので、振り払われると本気かと思ってしまった。
ユリスは気まずそうにチラチラとこっちを見てくる。
ツンとしていてもいつもこうして後悔しているのだろうが、それを言葉にできないのだ。
「ごめんなユリス、勘違いしてしまった。嫌じゃないなら嬉しいぞ。もうちょっとずつ練習しような。」
「っ、もおおおぉぉ……!…………、……うぅ、シャル、その、ご、……ごっ……ごめんね……!」
「なんの。傷つけたと思ったか?後悔するほうが苦しいだろうに。だから気にするな」
「うっ、うっ光属性……っ!」
どうにかこうにか謝罪するユリスがとても頑張っているので安心させるために微笑むと、眩しそうに目を塞がれた。なんでだ。
俺とユリスはそれからしばらく、おやつ時ぐらいまでの長い間二人で謝る練習をした。
俺をリューオに見たてて、懸命に言いやすくかつ気持ちを込めて考えたカンペを読む。
スムーズに言えるまで、何度も繰り返したのだ。
仏頂面で目を吊り上げたままにするのは大変だったが、リューオ感を出すためにそこは頑張った。
「さ、さっきはごめんね!僕の知らない間に、お前に仲のいい女の子がいたのかと思って、嫌だっただけ!そんなモヤモヤする自分を見られたくなくて追い出しちゃったけど、本当はもう怒ってないよ!」
「ソウカ、ソレハヨカッタゼ!ユリスダイスキ。ユリスカワイイ。オレモモウキニシテナイゼ!ユリスカワイイ」
「あり、ありがとうっ。それでね、デートの下見してくれたのは、その、嬉しかったから、無駄にするのも勿体無いし行ってあげるよ!」
「ナンダッテ、ゼヒトモイコウゼ!ユリスカワイイ」
「……っ、感謝してよね!」
「よし、オッケーだろう」
なんとかカンペを比較的スムーズに言えるようになったユリスに、俺は親指を立てて合格をだした。
ユリスはぱぁっと表情を明るくして、キャッキャとはしゃぎだす。
「やったぁ!聞いたシャル!ちゃんと言えてたでしょ!?この僕にかかれば素直に謝罪なんて朝飯前なんだからっ!」
「あぁ、ちゃんと聞いていた。これでリューオもきっとメロメロだ」
今日一番の笑顔のユリスが可愛らしくて、パチパチと拍手を送る。
リューオ役の俺もモノマネを頑張ったぞ。リューオ感が出ていたと思う。セリフも考えたんだ。
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