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第320話
そんな思考の元、やる気十分。
まずはそっとアゼルの胸元に顔を埋めて、肌を舐めてみる。
俺もアゼルもしたがりなんだが、アゼルのほうがド級にしたがりだ。
なのであまり俺が主導で触れることはないから、ドキドキする。
たまに俺が上に乗る時は触らせてもらえるが。
舌を使って片側の突起を愛撫しながらもう片方を手のひらでなで、様子を伺う。
しかしアゼルはうずうずとしながら俺の頭に手を添え、戸惑いつつも太ももを触ってきた。
たぶん控えめなお触りがどのくらいなのか、わからないんだろう。もう少し触ってもいいぞ。
大胆に触れてみる俺と、そっと触れるアゼル。
ふーむ……俺はここが気持ちいいんだが、アゼルはまったく感じていない。寧ろくすぐったそうだ。
ふっ、と息を吹きかけて反応を見るが、見事に無反応。筋金入りか。
「アゼルはここ、どうともないのか?」
「ぐりぐりすんな。まぁちょっとくすぐってぇけど、気持ちよくはねぇ」
「困ったンっ、こら、話し中、んッ」
「フフン、お前はめちゃくちゃ敏感だな」
「んんっ……アゼル、待てだ」
「! ぅぐっ」
イマイチ効果がないので困ってしまうと、逆に俺の胸元へ頭にあった手が移動して、弄り始める。
おかげでついビクッと反応してしまった。
誰のせいだ、誰の。
けれど待て、と言うとアゼルはちゃんと触るのをやめた。いい子だなと褒めると再び大人しくなる。
よしよし、まだ理性が働いているようだ。
パチン、と指を鳴らして召喚魔法を使うと、書類を止めるのに使っていた針金クリップが二つ手元に現れる。
それを見えるように指でつまんで見せると、そわそわと落ち着かない様子のアゼルは、不思議そうに首をかしげた。
「仕方ないから、これを使おう。それだけ鈍ければ痛くないから大丈夫だ」
「? こんなもんなににどう使うんだ?」
「お前の乳首を挟む」
「却下」
「だめか……」
自分は似たようなことをしていたくせに、俺がするとなると即答で拒否されてしまった。
せっかくこれで違和感を与えて意識がそこに行ってしまうようにし、集中することで敏感にしようとしてみる作戦が。
しょうがないからもう一度クリップをしまって、どうしたものかと悩む。
「あぁ、ひらめいたぞ。よしアゼル、うつ伏せにそこに寝てく「却下ッ!」なんでだ。めちゃくちゃ気持ちいぞ」
今度はひらめきから体内へのアプローチに変えてみると、食い気味に拒絶されてしまった。
「ぐるるるッ! もうお前はおとなしく俺に触らせやがれッ!」
「おわっ」
俺の事情なんてちっとも知らないアゼルは待ても限界で、唸る彼の見事な手腕により、ドサッとふかふかのベッドに転がされる。
驚いて起き上がろうとすると足を引っ張られて、下衣を剥ぎ取られた。
なんていう早業だ。
俺を押さえ込むのに慣れすぎやしてないか。
むくれたアゼルがお仕置きだと言わんばかりに首筋にがぶっと噛み付く。
牙はすぐに離れ、痕をペロペロと舐めだした。
傷はないが当たった髪がくすぐったい。
「んっ、ふふ、くすぐったい、アゼル、ふふふ」
「ふんっ、俺で遊ぶからだぜこのやろう。お前が触ったら俺が触れねぇだろうがっ」
「遊んでなんかないぞ? お前が俺じゃないと物足りなくなるように、感じるところを増やそうと思っただけだ。もうちょっと頑張ればできる気がする」
「あぁん? お前以外とこんなことするかよ。馬鹿シャル」
「それはわかっているが、煽り耐性が低すぎるなと思ってだな……お前、美脚の美女に誘われてもふらっとついて行ったらダメだぞ?」
「た、耐性低いのもお前だけっていってんだろアホッ! 無駄な心配のお仕置きだぜっ!」
「うあっ!? ふっあはははっ! くすぐるっのやめっあはっ! あはははっ!」
覆いかぶさったまま俺をくすぐり始めたアゼルに、俺は笑い声を上げながらバタバタと暴れた。
体が敏感だからか、俺はくすぐられるのに弱いんだ。
大の大人の男二人が子供のようにベッドの上でじゃれる様は、誰かに見られたら呆れる光景だ。
俺が必死に暴れてもびくともしないで乗りかかっているアゼルは、体幹のポテンシャルまで違うんだと思う。
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