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第327話

 ◇  ──翌日。 「あんの馬鹿勇者急に人のこと拉致したと思ったら、ドヤ顔で変態プレイリスト渡してきて好きな奴選べだよッ!? こちとらお肌が乾燥気味で全身海底泥パックで忙しいってのに、カサカサお肌で脱げるわけないじゃんッ! ていうかそもそも変態プレイはしないよッ!」 「乾燥肌だっただけか」 「なにさ! 僕は海辺の魔族なの!」  午後になってデトックス効果のあるハーブティ片手に、鬼気迫る勢いでやってきたユリスとのアフタヌーンティー。  開口一番昨夜に起こったらしい第X次リューオ襲来を叫び、シャーッ! と威嚇する。  話を聞くに、リューオは本当にプランを立ててユリスにプレゼンしたらしい。  魔界のピンクなお店で道具も揃えたようだ。全て没収したみたいだが。  たった一日で準備を整えたところは流石考えるより行動派代表である。  それだけユリスとの仲を早く修復したかったのだろう。  そして頑張るリューオに、ユリスのアンサーはノーサンキュー。  お泊りしたくないのはテクニック不足ではなかったのか。  単にお肌が乾燥気味になったから、リューオにお肌を触られるのが嫌だっただけと。リューオの深読みオチだ。  俺は怒り狂っているユリスになんとも言えない表情を返しながら、肩をすくめる。  即断即決のリューオは俺のアドバイスのせいで、ユリスに怒られてしまった。  友人の名誉のために、ちゃんと弁解しなければ。 「ユリス、実はかくかくしかじかで昨日不安になったリューオが俺を訪ねてきたんだが……見当違いのアドバイスをしてしまった。つまりその充実のラインナップ作戦は、俺のせいなんだ」 「はぁ〜? なにそれ! 別に夜に不満なんてないよ! 馬鹿じゃないのっ? 後ね、お前は魔族をなんだと思ってるの? そこまでやる人は魔界でもド変態だよ?」 「な、なん、だと……」  ユリスにありのままの真実を告げると、彼は目を丸くして身体の相性は問題がないと言う。  そして俺がこの一年と半年で培った夜の魔族事情の常識を、あっさりと否定した。  理論と事実に基づいた結論だったのだが……驚いてつまもうとした搾り出しクッキーを取り落としてしまったじゃないか。なんということだ。  本気で驚いている俺に、ユリスは馬鹿がここにもいるといった目でじっとりと見つめ、優雅にハーブティを飲む。  いや、いいや。  待ってくれ。ちょっと言い訳させてほしい。  リューオにも言ったが、俺だって多少これはどうなんだろうと思うこともあったんだぞ?  アゼルはスキル持ちの変態だから、普通ここまではやらないのかもしれないと思った。  しかしだな、俺が戸惑うレベルのことがしたくなったらしい時は、すごく当たり前の顔をしてそわそわと待機してるんだ。  基本的に素直にコレがしたいとは言わないアゼル。  誰になにを聞いたのかわからないが、新しいプレイを試したくなることもあるだろう。  仮に、仮になんだが……仮にな。  俺を獣人化して犬耳と尻尾を愛でたくなったなら、眠る前にホットミルクでも飲もうとした時に、しれっとカップの横に置かれていたりする。  使ってほしいのか? と聞くとそんなことはないと言うがそわそわが収まらないので、そのへんは頑張って察するのだ。  普通に仕込んでくるので、コスプレぐらいなら普通なのかなと思うだろう?  遠回しに伝えてくるだけで躊躇はしてないからな。  まぁ、その後首輪を取り出した時はん? と思ったが、犬なんだから首輪はするだろうな、と納得した。  放し飼いはよくない。  そもそも昨日は猫だった。  耳がなかったので普通にごっこ遊びだが、それくらいならノーマルだ。

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