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第328話

 それからコスプレと言っても女装をしたり、きわどい衣装を着たりはしてない。  普通に裸エプロンだとか、研究所の白衣だとかだ。伊達眼鏡をかけさせられた。  となれば多少縛ったり目隠しをしたり、基本的に焦らさられたり、恥ずかしいことを言われたりするのは一般的だと思う。  一度魔界のピンクな本を読んだこともあるが、あれによれば窒息プレイをしている人もいた。  夜事情は人に聞けないので、そう言う本やアゼル引くことの変態と言う式に基づいている。 「と言うことで、俺はなにもアゼルが変態だと知らないわけでもないんだぞ? 変態スキル持ちだからな。なのでその中からノーマルなものをチョイスして、それを魔界の基準と仮定し、リューオにアドバイスしただけでだな……」 「取り敢えずその試算間違ってるから白紙に戻して。今すぐ。それを常識だとあの馬鹿が思ったら、僕も基本的に焦らされるんでしょ? 嫌だよそんなの。毎回強請らなきゃいけないじゃん」 「毎回強請ってるんだが」 「基本強請らされるってどうなの」  どの基本なの、と今度は可哀想な子を見る目で見つめられた。  安心してくれ。  卑猥なセリフを指定されなければ、強請ることに羞恥心はあまり働かない。  挿れてほしいと言っても挿れてくれない時もあるのだから、多めに強請らなければまかり通らないのだ。  そう伝えると、どこに安心要素があるんだと叱られた。  ユリスは照れ屋だから難しいんだろうな。  まぁ……変態ではなくとも、アゼルは五割以上の確率で吸血プレイをする。  子犬、じゃない狼型吸血鬼だからだ。  種族的嗜好で仕方ないので、それを思うと概ねが普通になるんじゃないか?  ほら、血を吸われるとムラムラするだろう?  催淫毒で大抵のことに悦ぶ淫乱になってしまうので、その状態の俺としてもやぶさかではない。  ハーブティを飲み、内心で考える。  なるほど。それを考えれば、思うより俺達の性生活はアブノーマルめなのか。 「そうか……これはちょっとと思ったんだ……」 「なにさ変態ネズミ」 「んん、変態もネズミもよろしくない」  ボソリと呟くと耳ざとく拾ったユリスは、辛辣なあだ名をつけた。  戦闘力がハムスターで夜は変態なんて称号は是非ご勘弁いただきたい。  ──……ちなみに、なんだが。  今俺の胸には、昨日アゼルに取り付けようとしたクリップが付けられている。  うーん。  なに食わぬ顔というのも大変だな。  好き放題した次の日はご機嫌なアゼルが、今朝仕事前に仕返しだと取り付けた。  仕返しと言っても、俺は付けそこなったんだがな。  潤滑油を塗ってからパチンと。  朝日に照らされる胸元を見ながら、これは変態寄りだな、と思ったのが今朝だ。  薄いさらしを乳首のところだけ一本巻かれ、上からシャツを着たが、水でもかぶればたちまちこの惨状が透けてしまう。  つまり。  素知らぬ顔でユリスとお茶をしながら話をしている現在の俺は、その実、乳首にクリップをつけられた恥ずかしい人だということだ。  これを一日付けてろと言ってくるアゼルと、別に構わないと頷いた俺。  ……どっちが変態なのだろうか……。  少々悩んだ俺だった。

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