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第401話
昼食の配膳を頼んでから、しばらく後。
いつ呼ばれてもいいように既に厨房で用意されていたのか、あまり待たずに全員分の昼食が運ばれてきた。
今日の昼食は、ドライフルーツがぎっしりのパンに、目玉焼きの乗ったハンバーグと付け合せのソテーされた野菜がメインだ。
プラス豆のサラダと、デザートにはよく冷えたカットフルーツがあった。
それが俺の分とその半分のタローの分、二倍量のリューオの分が運ばれてくる。
ユリスにだけは特盛のペスカトーレとワイン五本が運ばれてきたのは、言うまでもない。
お客さんがいる時用の大きめの丸テーブルに、マルオ達はなれたように配膳した。
マルオ達カプバットは戦闘力こそ低いが、物を浮かせて運ぶ念力のスキルをみんなが持っているので、従魔の仕事は苦じゃないらしい。
基本的に俺とアゼルの世話仕事以外は、全部自由時間だからな。
元気なマルオは俺にまとわりついてキャッキャと戯れてから、仲間と一緒に帰っていった。
「タロー、リューオ、ご飯だぞ〜」
今度はお馬さんごっこをしている二人に声をかけると、すでに席についているユリスから、キュポンとワインの栓を抜く音が聞こえてきた。
もちろん、俺は機嫌をよくすることができなかったんだとも。
面目不甲斐ない。
友人の危機になんの力にもなれずだ。
「おー、ようしタロー! シャルパパのとこ行くかァ!」
「ぴぃ! しゃう〜!」
リューオは俺の声に返事をすると、タローを小脇に抱える。
そして飛べなくともわさわさ動く翼を避けながら、ブーンとこちらまでやってきた。
しかし快活な笑顔が一歩ごとに曇っていくのだ。
到着する頃には、ボトルを掴んで直接飲んでいるユリスに笑顔のまま青ざめていた。
無邪気な笑みを浮かべ俺に向かって両腕を差し出すタローとのコントラストが、悲しいレベルである。
「しゃう、しゃう〜! がお、ぴぉっ、ぴぴっ!」
「そうか。リューオお兄ちゃんに遊んでもらえてよかったな、タロー。ご飯を食べるから、シャルのお膝においで」
「ごあん、しゃぅとっ!」
リューオからタローを受け取り、よっと膝に乗せた。
なにもわかっていないタローは、俺の膝の上でそわそわとテーブルの食事を見つめている。
かわいい。癒やされる。
リューオはユリスの向かい側、俺の隣あたりの席についた。
明らかにユリスのご機嫌斜めを察して、困った時は俺を盾にする気しかないということはよくわかるぞ。
「ゆ、ユリスゥ〜……?」
──バシィンッ!!
「いただきます」
「ええ、えっ、えっ」
「タロー、いただきますは?」
「ぴぃ! いたぁ、ぴっ、まう!」
「うん、いただきます」
ものすごい勢いで手を合わせるユリス。
パチン、と愛らしく手を合わせるタロー、と俺。
混乱するリューオがそっと手を合わせて恐る恐る挨拶をしてから、俺の耳元にこっそりと唇を寄せる。
いけない。
それは余計にユリスの酒を進めるぞ。
「シャル、ユリスはなんで怒ってんだ……!? 今日は久々テメェに会えるから、若干機嫌良かったぜ?」
「そうだな……それは魔族がとても嫉妬深いということと、お前がタローと見たこともないような朗らかな笑顔で楽しそうに遊んでいたから、だな。それから今のこの状況もだ」
「げッ!? な、なん……だと……!?」
「ぴ? わたし、と? あそぅ、かあ、がおがお……ゆんちゃ、に、めっ?」
「んーん、大丈夫だぞ。ユリスはお前が嫌いなんじゃなくて、自分の好きな人が他の子と遊んでいるのが、寂しかっただけなんだ」
合点がいったリューオは驚愕の目で、まさか子供に嫉妬されるとはとにやけるような、焦ったような、なんとも形容しがたい表情をした。
そうだな。
俺の旦那さんは卵から無機物も動物も嫉妬の対象だから、現実だ。
魔族あるあるだ。
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