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第403話

「おう。まあ喧嘩でもなんでもねェし、俺らはラブラブだかんな。とりあえず俺、腹減ったわ……」 「がおがおぅ、はばぐっ! ぴぃ!」 「おっと。あーんはもうだめだぜ? ガオガオのあーんはゆんちゃん専用なのォ」 「? ぴぅぅ……? せんよ?」  あーんにはまったのかタローがハンバーグを差し出すと、放置していたランチをがっつきながら、リューオはデレ~っと頬を垂らしておどけてみせた。  ユリスがそっぽをむいている。  文句を言わないあたり、この反応は正解みたいだな。  俺はそんなデレデレのリューオがかわいらしくて、タローの介助で半分ほどしか食べていないプレートに、フォークを置いた。 「りゅーお」 「あん?」  名前を呼ぶと、リューオはきょとんとして俺を見る。  その頬にハンバーグのソースが付着していて、俺は手を伸ばして頭を引き寄せ、その頬をペロリと舐めた。 「ん、ついてるよ」 「「はッ!?!?」」 「ちゅてる~」  リューオとユリスから驚きの声があがるが、俺には届かない。  キスを知らないのか、タローがキャッキャと笑った。  その声を聞きながら更にそのまま引き寄せて、リューオの唇を奪う。  ──はずだったんだが。  後頭部にゴンッ! と襲いかかる拳骨に止められ、逆側の隣を振り向いた。 「ゆりす、いたい」 「痛いじゃないでしょなにやってんのいくらシャルでも八つ裂きにするよ!?」  そんな、俺はただ好きなかわいいこをかわいがりたいだけなのに。  どうして八つ裂きにされないとだめなんだ?  肩を落としてしょんぼりと落ち込み、俺はユリスに甘えるために両腕を伸ばして、小さなユリスを捕まえた。 「え、ちょっ、待ちなよなにすっ」 「ゆりす、かわいい……すき……んん、」  俺を叱るユリスに悲しくなって引き寄せ、その桃色に色づいた小さい唇に吸い付く。  トマトソースの味がする。ふふふ。 「んんーッ!?」 「オラァッ!!」 「ぅ、はっ、」  しかしそれをじっくり味わう時間を与えられず、だ。  すぐにまた後頭部に先程よりだいぶ強めの拳骨がドゴンッ! と落とされてしまう。痛い。  俺はユリスを解放してから、キョトンとするタローを抱きしめた。  犯人はもちろん、青筋を立てたリューオだ。  酷い。酷すぎる。  ユリスが好きでかわいいからそれを伝えただけなのに、リューオは俺をたんこぶができそうなほど容赦なくぶった。 「こっこいつなんなんだ酔ってんのか!? 初めて見たけど、酔ったらキス魔になんのかッ!? いやキス魔ってか甘えた? わがまま? 子供? なんでもいいけど俺のユリスに手ェ出しやがってェ……ッ!」 「うぶぶぶっいひゃいくちびうとれるでしょッ! そんなことより今のが魔王様にバレたら打ち首獄門間違いなしなんだよ!?」 「俺達二人ともアウトかよッ! よしユリス、これは墓場まで持っていくぜ。俺達だけの秘密だ」 「当たり前でしょ。落ち込むか怒るか、どっちにしても魔王様はご乱心するからね……!」  解放されたユリスに駆け寄り、彼の唇をひたすらお絞りで拭うリューオ。  二人は小声でほの暗い決意を固めている。  秘密なんて寂しいじゃないか。  それに俺は酔ってないぞ?  自分のアルコール許容範囲ぐらい、把握してるからな。  断固拒否されたので不貞腐れて気落ちしてしまう。  すると俺に抱きしめられていたタローが、ハンバーグの最後の一口を飲み込んで、心配そうに俺を見上げた。 「しゃう、めって、さえた? ぴぃ〜……」 「うん、そうなんだ。くちびるをあわせるのは、だいすきってことで……んと……とてもかわいいということで……、これをきすという。ちゅーでもいい」 「! ぴぴっ、ちゅー! わたし、しってう!」

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