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第404話

 大好きのキスを説明すると、タローはどうしてか覚えがあるようで、ニコーっと満面の笑みを浮かべた。  翼がワサワサしてる。 「たまこの、ときっ、しゃうとまおちゃ、ちゅーする、こえした! ぴぃ〜、ぴぅ……しゃぅくるしそ、だたね〜……ぴぴ?」 「えっ?」 「えっ!?」 「んん〜……、あぁ……それはいちばんだいすき、の、ちゅー」  ふむふむ。  タローの説明によると、俺とアゼルの夜事情は、幼気な少女に音声発信されていたみたいだな。  その話が聞こえていたユリスとリューオが目を見開いて「家庭内気まずくなるショックランキングトップだろ」的なことを呟いている。  いやいや、大丈夫。  息苦しいけど気持ちがいいキスは、大人のキスなのだ。  ……あれ?  そもそもキスがバレているということは、セックス音声もお届けしてしまっていたのか。  ハッとしてタローの顔を俺のほうへむけたまま頬を挟んで固定し、真剣に見つめる。  情操教育に適していない。  えっちなお父さんは嫌だと言われたら、きっと日々辛い。  娘は年頃になるとお父さん嫌いと言うらしい。辛い。  ──となればだ。 「んん……たろにも、したげよう……」 「ぴぃ!」  我が娘にも好きの気持ちをだな、やはり伝えるしかないんだ。  この唇で。  素敵な結論に至ったので、俺は固定したタローの顔に上から頭を下げた。  ユリスとリューオが俺の代わりに混乱している間に、照準を合わせる。 「たろ、かわいい。だからおれをすきになって? おれ、だいすきだ、いっぱいする……」 「ぴよっ、ンン〜っ?」  そしてウキウキと目を閉じてキス待ちをするタローに、ムチュ〜ッとしっかりめにキスをした。 「はっ、んん……、」 「ふぐぐっ、んー? んー……?」 「……、なァオイ待てよ、ちょっと目を離したスキに今俺の目の前で自分の娘に舌絡めて吸い付いてんのは、みんな大好き大馬鹿野郎こと、シャルで間違いねェのか?」 「……、間違いあってほしいんだけど、現実な気がするよ。んで、なんでひよこは無抵抗なわけ……?」  タローの歯列を割り開いて舌をつき込み、中を掻き回す。  お父さんタローが好きです、かわいいですって気持ちを込めて、たっぷりと貪った。  アゼル仕込みのキステクなんだが、相手が官能が芽生えているわけない孵化数日のヒナドリなので、擽ったそうにしているだけなのが残念だ。  リューオがもう少し許してくれていれば、ユリスの腰もしっかり砕けたのに。  混乱から帰ってきた件の二人の声が聞こえるが、なにを言っているのかはよくわからないな。  ぼへっとした頭のまま最後に熱い頬をタローのモチ肌に擦り付け、唇を離す。  ふふん、これが大人のキスだ。  殻の向こうでは、こんなことがあったんだぞ? 「っ、ふ、……たろ、これ、おれね、あぜるにだけするちゅー。いちばんだいすきの、ちゅー……たろにしたの、あぜるにないしょな? しーして、しー」 「ぷあっ、ぴぃ〜……っ! こっこしょば、った……! わかった、まおちゃ、しーするっ」 「いいこ、いいこすき。しー……」 「しー。んふふ〜しゃぅとわたししたの、なしょね! だからね、まおちゃにすきのちゅー、しゅる〜」 「駄目だコイツてんでナイショの意味理解してない! 暴走魔王の召喚を阻止する為にタロー隔離すんぞ! アイツ全部無自覚でゲロる」 「ついでにたった一言で建物が吹き飛ぶことを脳髄に叩き込んであげるよ」  平和にタローと指を立ててナイショのポーズを取っていると、瞬間、膝の上からさらわれるタロー。  顔をゆるゆる振ると、ちょっと離れたところに先生からタバコを隠すみたいな焦りようでタローを確保する、友人二人がいた。  またリューオか。  酷い。酷すぎる。  今度はユリスまで協力して、俺の手を引き剥がした。  あぁ、素早い二人によって、タローがトラッキングチェアにかけてあるブランケットで、包まれているじゃないか。

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