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第415話(sideアゼル)

 ゴホン。  俺の能力は置いておくか。話を戻すぜ。  ライゼンは別に女のような顔をしているわけでも、ユリスみてぇな柔らかな体つきなわけでもない。  なんというか髪も長いし、どっちにも見える容姿をしている。  更に手足も細く色も白い、顔も小さいし話し方も柔和な感じだ。  イコールで俺はチーム戦のポイントを稼げると見たわけだが、それがライゼン的にアウトだったらしい。 「ふふふ……お話しましょう……これは私がまだ宰相ではなかった頃の話です……」  やさぐれた青い顔のライゼンが、おどろおどろしい言い方で話始める。  肝試しにはまだ早い時期だと思うぜ。  そもそも魔界、ホラーサイドだから怖くねぇけどな。 「短髪が似合わないのと髪の手入れをするのが好きなので、当時も長髪にしていた私は、今より背も小さくもう少し華奢でした。そして前魔王様は魔王様よりも内外ともに実力主義で武力を重んじていた為、お城には屈強な男たちが多かったのです」 「ん」 「元々女性が少ない魔王城はほとんど男だけになり、自由な魔族なので男に走る者が増え始めます。そしてどうせ男に行くなら女性っぽいやつに行こうという心理のもと、まだそれほど地位の高くなかった私は、ノリで散々セクハラ紛いの行為をされ揶揄われ、おじさん世代の男魔族に多大な偏見とトラウマを味わわされたと言うことでした」 「おじさん世代か」 「はい。だから魔王様がやってきた時は若くて落ち着いた人が来たと内心小躍りしましたよ……! 昔は言葉を覚えるまでカタコトで話していて、魔王様はかわいかったのに……」  話し終わったライゼンは当時を思い出して、また火花を弾けさせそうなくらい怒りに震えていた。  相当屈辱的だったみたいだな……。  闇が深い。後半がボソボソとして聞こえなかったけど。  ちなみにライゼンと同世代な魔族、ユリスの父親で海軍長のワドラーも昔はユリスみたいに華奢だったらしい。  髪の長いアイツも、セクハラの餌食だったそうだ。それで仲良くなったとか。  そんな話を聞いたら女装が屈辱的なのもわかる気がして、俺はこれ以上無理を言えなくなった。  絶対着物とか言う魔界の東方の街の衣装が似合うと思ったのによ。  俺も昔は切るのを面倒がっていて髪が長かったが、そんな視線に刺されたことはない。  セクハラは愚か、触れられたことすらねえかんな……美人な奴は両方にモテるから大変だぜ。  腕を組んでしみじみと呟く。  そんな俺を、ライゼンは微妙な空気を纏わせ苦笑いで見つめてきた。なんだよ。 「あの頃の魔王様はどんどん人を避けるようになっていったので、ご存じないでしょうが……今より大人しくてお綺麗でしたから、やましいことを考える輩はそこかしこにいましたよ。なお今でも、魔王様は見るといいことがあると言って、お城で縁起物扱いされてます」 「オイ嘘だろ」 「ちなみにシャルさんは声を掛ければ必ず挨拶をしてくれるのと、一見堅物そうな容姿を裏切って、かわいらしく手を振ってくれるので、見たら癒やされる移動型癒やしスポット扱いされてます。最近はタローもいるので、癒やしマシマシだとか。本人たちは全く気づいてませんよ」 「それは本当だろ」 「両方本当です」  話が逸れると不意を打って俺の知らない魔王城ジンクスが判明し、今度は俺が引き攣った顔でライゼンを見つめる羽目になった。  シャル単体だと、なんかこう、俺のものだと知らない新人共をたまにタラして来やがるのは知ってたけどよ。  アイツ鈍い上に天然だから全く気づいてねぇけど、人を胸キュンさせることに関しては、不動のキングだからな。  しかし、いやまさか、昔の俺が不埒な目で見られていたとは初耳だった。  俺でやらしいことをすんのが許されてるのはこの世でシャルだけだってのに、死に急ぎ魔族が多かったのはいただけない。  今の俺に容姿と中身込みで心底からかわいいと言ってくるのは、シャルだけだったりする。  アイツは多分、タラシの国のナイトだ。  でも現状、俺専用のエプロンが似合うお嫁さんである。ふふん。あげねぇぞ。永遠に俺のだ。

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